キャリアパスの意味と、等級制度・キャリアプランとの関係、単線型と複線型の違いを整理。中小企業でキャリアパスをつくる5つの手順と職種別の例、面談で社員に示すときのポイントを解説します。
この記事でわかること
- キャリアパスは、社内で経験を積んで上がっていく道筋と、各段階の条件を示したもの
- 等級制度の上に「どの順に、何ができたら進めるか」を書き足すとつくりやすい
- 管理職以外の道も用意すると、専門性を伸ばしたい人の行き先ができる
目次
キャリアパスとは、社員が社内で経験を積みながら、どの仕事や役割へ進んでいけるのかを示した道筋のことです。各段階で求められる役割と、次へ進むための条件をあわせて示します。
社員にとっては「この会社で何を目指せばよいか」が分かり、会社にとっては育成の計画が立てやすくなります。
この記事では、キャリアパスの意味と等級制度との関係、単線型・複線型の違い、中小企業でつくる手順と例、社員に示すときのポイントを紹介します。
キャリアパスとは
キャリアパスは、社内での成長の道筋を、段階ごとの役割と条件で示したものです。「この仕事を1人でこなせるようになったら、次はこの役割を任される」という見通しを、社員全員が見られる形にします。
キャリアパスには、主に次の3つを盛り込みます。
- 段階:一般社員、リーダー、管理職などの役割の並び
- 各段階の役割:その段階で任される仕事と期待される成果
- 次へ進む条件:必要な経験・スキル・資格や、評価の目安
キャリアプランとの違い
キャリアプランは、社員一人ひとりが自分で描く将来の計画です。「5年後に新しい事業の立ち上げに関わりたい」のように、本人の希望が出発点になります。
キャリアパスは、会社が用意する道筋です。社員は会社が示したキャリアパスを見ながら、自分のキャリアプランを考えます。
等級制度との関係
等級制度は、社員を役割や能力の段階に分けて、各等級に期待することを定めた仕組みです。キャリアパスは、その等級を「どの順に、何ができたら進めるか」という道筋として見せたものだと考えると分かりやすくなります。
等級制度がある会社なら、等級定義に昇格の条件と分かれ道を書き足すと、キャリアパスの骨格ができます。等級制度の種類と作り方は等級制度とは?で解説しています。
キャリアパスを示すメリット
キャリアパスを社員に示すと、会社と社員の双方に次のようなメリットがあります。
社員が次の目標を持てる
自分が今どの段階にいて、次に何ができればよいかが分かると、日々の仕事の意味をつかみやすくなります。目標設定のときも、「次の段階の条件に近づく」という軸で目標を考えられます。
育成の計画が立てやすくなる
各段階に必要なスキルや経験が決まっていると、上司は部下に何を任せ、何を教えればよいかを判断しやすくなります。研修や資格取得の支援も、どの段階の人に向けたものかを決めやすくなります。
昇格の判断を説明しやすくなる
次へ進む条件が先に示されていれば、昇格の判断を条件に沿って説明できます。「なぜあの人が先に昇格したのか」という不満も出にくくなります。
社員が長く働き続ける理由になる
この会社にいても先が見えないと感じると、成長したい人ほど社外に目を向けがちです。社内で目指せる道があると分かれば、この会社で働き続ける理由の1つになります。
キャリアパスの種類
キャリアパスは、道筋の分かれ方によって大きく2つに分けられます。
| 種類 | 道筋 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 単線型 | 一般社員→リーダー→管理職と、1本の道を上がる | 職種が少なく、管理職への昇進が主な成長の形になっている会社 |
| 複線型 | 途中から管理職の道と専門職の道などに分かれる | 技術や資格が強みで、専門性を深めたい人が多い会社 |
単線型キャリアパス
単線型は、全員が同じ道を上がっていく形です。分かりやすく、少人数の会社でもすぐにつくれます。
ただし、上に進む方法が管理職になることしかないと、管理職に向かない人や専門性を伸ばしたい人の行き先がなくなります。管理職のポストが埋まると、昇格が止まる人も出てきます。
複線型キャリアパス
複線型は、ある段階から複数の道に分かれる形です。代表的なのは、部下を持って組織を動かす「管理職コース」と、専門の技術や知識で成果を出す「専門職コース」に分ける方法です。
複線型にすると、管理職にならなくても上の段階を目指せます。一方で、専門職コースの役割と処遇があいまいだと「管理職になれなかった人の行き先」と受け止められてしまうため、専門職に期待する成果をはっきり書くことが大切です。
キャリアパスの作り方
中小企業でキャリアパスをつくる手順を、5つに分けて紹介します。最初から全職種をそろえる必要はなく、人数の多い職種から始められます。
手順1:職種と段階を整理する
まず、社内の職種を洗い出し、職種ごとに段階を並べます。等級制度があれば、その等級をそのまま段階として使います。
等級制度がない場合は、次のように役割の違いで3〜5段階に分けると始めやすくなります。
- 指示を受けて担当業務を進める段階
- 担当業務を1人でやり遂げる段階
- 後輩を指導し、チームの仕事を回す段階
- 部署の目標に責任を持つ段階
手順2:各段階の役割と求めるスキルを書く
段階ごとに、任される仕事・期待される成果・必要なスキルを書きます。「主体性がある」のような言葉だけでなく、「取引先との打ち合わせを1人で進められる」のように行動で書くと、本人が自分と見比べられます。
必要なスキルは、スキルマップの項目とレベルで示すと具体的になります。スキルマップの作り方はスキルマップとは?で紹介しています。
手順3:分かれ道を決める
管理職以外の道を用意するかどうかを決めます。専門職コースを置くなら、どの段階から分かれるか、専門職の上位段階に何を期待するかを書きます。
分かれ道は、担当業務を1人でこなせるようになった中堅の段階に置くと、本人が向き不向きを判断しやすくなります。早い段階で分けると、本人は仕事の経験が浅いまま道を選ぶことになります。
手順4:次の段階へ進む条件を決める
段階ごとに、上に進むための条件を決めます。条件は1つにせず、いくつかを組み合わせると判断がぶれにくくなります。
- 直近の評価結果(例:2期続けてA以上)
- 経験(例:リーダーとして1年以上チームを担当)
- スキル(例:指定のスキル項目がすべてLv3以上)
- 資格(例:業務に必要な資格を取得している)
「在籍◯年以上」のような年数だけの条件にすると、成長の早い人が待たされます。年数は目安にとどめ、役割を果たせているかを中心に見ます。
手順5:図や表にまとめて公開する
段階・役割・条件を、職種ごとに1枚の表や図にまとめます。社員がいつでも見られる場所に置き、面談のたびに見返せるようにします。
公開するときは、社員向けの説明会や朝礼などで、つくった理由と使い方を伝えます。表を配るだけで終わらせず、上司が部下と話すときの材料として使うことを伝えておきます。
職種別のキャリアパスの例
ここでは、複線型のキャリアパスの例を2つ紹介します。段階の名前や条件は、自社の仕事に合わせて読み替えて使えます。
表の「次へ進む条件」は、その段階からひとつ上の段階へ進むための条件です。3a・3bの行は、さらに上の段階(課長や上級の技能職など)へ進むための条件の例です。
製造職の例
| 段階 | 役割 | 次へ進む条件の例 |
|---|---|---|
| 1. 作業者 | 手順書どおりに担当工程の作業を行う | 担当工程を1人で決められた品質と時間で終えられる |
| 2. 中堅作業者 | 複数の工程を担当し、不具合に気づいて報告できる | 3つ以上の工程を担当できる。新人に担当工程を教え、1人で作業できるところまで育てた |
| 3a. 班長(管理職コース) | 班の生産計画と人の配置を決め、安全と品質を管理する | 班の目標を2期続けて達成。部下の育成計画を立てられる |
| 3b. 技能リーダー(専門職コース) | 難しい加工や設備の調整を担い、技能を社内に伝える | 社内の技能認定の最上位を取得。作業標準の改訂を主導した |
事務職の例
| 段階 | 役割 | 次へ進む条件の例 |
|---|---|---|
| 1. 担当 | 決められた手順で受発注・経理などの定型業務を行う | 担当業務を期日どおりに、ミスなく処理できる |
| 2. 主任 | 担当業務の手順を見直し、後輩に教える | 業務手順の改善を1件以上提案し、実行した |
| 3a. 係長(管理職コース) | 部署の業務を割り振り、メンバーの評価と育成を担う | メンバー全員と月1回の1on1を1年続け、部署の目標を達成した |
| 3b. 専門スタッフ(専門職コース) | 経理・労務などの専門知識で社内の相談に応える | 業務に関わる資格を取得し、社内の相談窓口を任されている |
条件は「できる・できない」が判断できる書き方にしておくと、本人と上司の見方がずれにくくなります。
社員にキャリアパスを示すときのポイント
キャリアパスは、つくって公開しただけでは使われません。日々の面談や評価の中で、繰り返し話題にすることが大切です。
面談で「今どこにいるか」を一緒に確かめる
評価面談や1on1で、本人が今どの段階にいて、次の段階の条件のうち何ができていて何が足りないかを一緒に確かめます。足りない条件が分かれば、次の期の目標や任せる仕事が決めやすくなります。
面談の進め方は1on1面談の進め方で紹介しています。
本人の希望を先に聞く
管理職コースと専門職コースのどちらに進みたいかは、上司が決めつけずに本人の希望を聞きます。本人の希望と会社の期待が違う場合は、お互いの考えとその理由を話し合います。その場ですぐに結論を出す必要はありません。
道は変えられることを伝える
一度選んだコースから戻れないと、本人は道を選ぶのをためらいます。専門職から管理職へ、管理職から専門職へと移れる場合は、その条件もあわせて示しておきます。
評価や等級の基準と内容をそろえる
キャリアパスに書いた条件と、実際の評価項目や昇格の判断が食い違うと、社員はキャリアパスを信用しなくなります。評価制度や等級定義を見直したときは、キャリアパスも一緒に見直します。
JOB COMPASSの職種・等級では、職種×等級のマトリクスで各セルの役割・求めるスキル・昇格の条件を定義できます。等級と連動させた評価期間では、採点や面談の画面に本人の等級と期待役割が表示されます。
まとめ
- キャリアパスは、社内での成長の道筋を、段階ごとの役割と次へ進む条件で示したものです。
- 等級制度がある会社は、等級定義に昇格の条件と分かれ道を書き足すとつくりやすくなります。
- 1本の道を管理職へ上がる単線型と、途中で専門職の道にも分かれる複線型があります。専門性を伸ばしたい人が多い会社には複線型が向いています。
- つくる手順は、職種と段階の整理、役割とスキルの記述、分かれ道の決定、条件の決定、公開の5つです。
- 公開したあとは、面談で本人の現在地と次の条件を一緒に確かめ、評価や等級と内容をそろえて使います。
まずは人数の多い職種で、段階と次へ進む条件を1枚の表に書き出すところから始められます。
よくある質問
社員が10人程度の会社でもキャリアパスは必要ですか?
あったほうがよいでしょう。少人数の会社ほど役職の数が限られるため、社員は「この先どうなるのか」を想像しにくくなります。
最初は職種ごとに3段階程度の簡単な表でも十分です。管理職のポストが少ない場合は、専門職の道を用意しておくと、昇格の機会を役職の空きに左右されにくくなります。
キャリアパスと等級制度は、どちらを先につくればよいですか?
等級制度を先につくり、それをもとにキャリアパスを示すのが進めやすい順番です。等級ごとの役割が決まっていれば、等級の並びに条件と分かれ道を書き足すことでキャリアパスをつくれます。
等級制度をつくる余裕がない場合は、キャリアパスの段階を仮の等級として使い、運用しながら等級制度に整えていく方法もあります。
専門職コースを選んだ人の処遇は、どう考えればよいですか?
同じ段階であれば、管理職コースと専門職コースの処遇に大きな差がつかないように設計します。専門職の処遇が低いと、専門職コースを選ぶ人が少なくなってしまいます。
そのためにも、専門職の上位段階に期待する成果を具体的に書き、評価で確かめられるようにしておきます。昇給・賞与への反映のしかたは、自社の評価制度とあわせて決めます。
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