営業職の人事評価で使える評価項目を、成果・プロセス・スキルの3つに分けて例で紹介。売上だけで評価しないための基準の決め方、レベル定義の例、チームへの貢献の扱い方も解説します。
この記事でわかること
- 営業職の評価項目は、成果・プロセス・スキルの3つに分けて考える
- 売上だけで評価すると、担当の差や短期志向が点数に出やすい
- 新規開拓・ルート営業など営業のスタイルで、見る項目と比重を変える
目次
営業職の評価項目は、売上などの「成果」、成果に至る「プロセス」、提案や交渉の「スキル」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。数字だけで評価せず、成果を出すための行動と力も項目にするのがポイントです。
数字以外に何を見るかは、営業のスタイルによって変わります。新規開拓とルート営業では、成果を出す行動が違うためです。
この記事では、営業職の評価項目と評価基準の例、レベル定義の例、チームへの貢献の扱い方、比重の決め方を紹介します。
営業職の評価項目は「成果・プロセス・スキル」で考える
営業職の評価は、次の3つに分けて項目を作ると、偏りの少ない評価になります。
- 成果:売上・粗利・受注件数・新規顧客数など、期末に結果として出たもの
- プロセス:訪問・提案・フォローなど、成果を出すために取り組んだ行動
- スキル:ヒアリング・提案書作成・交渉など、営業の仕事に必要な力
成果は「今期どれだけ売れたか」、プロセスは「どう動いたか」、スキルは「どんな力を身につけたか」を見ます。プロセスとスキルがあると、成果が出なかった期でも、次に何を変えればよいかを具体的に話せます。
成果とプロセスの関係は業績評価とは?で詳しく解説しています。この記事では、営業職に当てはめた項目と基準の例に絞って紹介します。
売上だけで営業を評価するとうまくいかない理由
営業は数字が出やすい職種なので、売上だけで評価したくなります。しかし、売上だけの評価には次のような問題があります。
担当の違いが点数に出る
営業の成果は、担当する地域・顧客・商材によって大きく変わります。大口の既存顧客を引き継いだ人と、ゼロから新規開拓を任された人では、同じ努力でも売上に大きな差が出ます。
担当に恵まれた人が高く評価され続けると、厳しい担当を任された人は評価に納得できなくなります。
短期の数字を優先するようになる
売上だけを見る評価では、期末に数字が出る仕事が優先されます。時間のかかる大口案件の育成や、既存顧客への丁寧なフォローは後回しになりがちです。
期末に取引先へ必要以上に買ってもらう「押し込み販売」で、翌期の売上を先取りする行動も起きやすくなります。無理な値引きで受注を急ぎ、利益を削ることもあります。
営業の力が育たない
売上は、景気や商品の力、前任者が築いた関係などでも上下します。売上だけを見ていると、本人の提案力やヒアリング力が伸びたのかどうかが分かりません。
成績の良い人のやり方も評価の対象にならないため、チームに共有されにくくなります。
営業のスタイルによって見るべき点が変わる
同じ営業職でも、仕事の中身によって成果を出す行動は違います。自社の営業がどのスタイルに近いかを確かめてから項目を選びます。
| スタイル | 成果の例 | 特に見たいプロセス・スキル |
|---|---|---|
| 新規開拓営業 | 新規顧客数・新規受注額 | 見込み客の開拓、初回訪問の数と質、ヒアリング |
| ルート営業(既存顧客) | 既存顧客の売上・継続率 | 定期訪問、要望の早期把握、追加提案、トラブル対応 |
| 反響営業(問い合わせ対応) | 成約率・成約件数 | 問い合わせへの初動の早さ、提案の的確さ、すぐに決まらなかった見込み客へのフォロー |
| 内勤営業(インサイドセールス) | 商談の創出件数・商談化率 | 架電・メールの質、見込み度の見極め、外勤の営業への引き継ぎ |
新規開拓営業は、成果が出るまでに時間がかかります。プロセスの比重を高めにしないと、見込み客づくりに力を入れた期ほど評価が低く出ます。
ルート営業は、売上の大部分がこれまでの取引で決まります。既存顧客との関係をどう深めたかをプロセスで見ると、本人の働きが評価に表れます。
成果の評価項目と評価基準の例
成果の項目は、何で測るか(指標)と、どこまでできたら標準か(基準)をセットで決めます。
| 評価項目 | 指標の例 | 基準の決め方 |
|---|---|---|
| 売上目標の達成 | 売上の目標達成率 | 期初に担当ごとの目標を合意し、達成率を段階に置き換える |
| 利益への貢献 | 粗利額・粗利率 | 値引きで売上だけ伸ばす行動を防ぐため、売上と並べて置く |
| 新規顧客の獲得 | 新規取引社数・新規受注額 | 新規開拓を担う人だけに置き、件数と金額のどちらで見るか決める |
| 既存顧客の維持・拡大 | 継続率・既存顧客の売上の伸び | 解約・取引停止の件数も合わせて見る |
| 代金の回収 | 期日どおりに入金された割合 | 売りっぱなしにせず、回収までを営業の仕事として扱う |
売上だけでなく粗利や回収も並べて置くと、無理に売っても評価が上がりにくくなります。
達成率を評価の段階に置き換える表は、業績評価とは?で例を紹介しています。標準を100%ちょうどにせず前後に幅を持たせると、目標をわずかに下回っただけで評価が下がることを防げます。
プロセスの評価項目の例
プロセスの項目は、社内で成果を上げている営業がふだん何をしているかを書き出すと見つかります。上司が見て確かめられる行動として、「〜している」の形で書きます。
案件をつくる行動
- 見込み客のリストを自分で作り、優先順位をつけて計画的に訪問している
- 初回訪問の前に、相手の会社の事業や課題を調べている
- 紹介をお願いできる既存顧客に、定期的に声をかけている
提案・商談の進め方
- 提案の前に、相手の課題・予算・導入の時期・決裁する人を確かめている
- 相手の課題に合わせて、提案書の内容を作り分けている
- 商談のたびに、次の打ち合わせの日程と、それまでにお互いがやることを決めている
顧客とのつきあい方
- 受注後も定期的に連絡し、使い方の困りごとや新しい要望を聞いている
- クレームやトラブルの連絡に、その日のうちに一次対応している
- 約束した期日と内容を守り、変更があるときは早めに伝えている
社内の連携と報告
- 案件の進み具合を、決められた期日までに記録・報告している
- 受注の見込みが変わったときは、上司と関係部署に早めに共有している
- 納品や制作を担う部署に、顧客の要望を正確に引き継いでいる
プロセスの項目は1人あたり5〜8個程度に絞ると、評価者も本人も覚えておけます。全部を一度に入れず、今期に特に伸ばしてほしい行動から選びます。
スキルの評価項目とレベル定義の例
スキルの項目は、「聞く→提案する→交渉する」という仕事の流れに沿って並べ、それを支える知識や案件管理の力を加えると漏れが出にくくなります。
- ヒアリング:相手の課題や本音を聞き出す力
- 提案書作成:課題に合った解決策を資料にまとめる力
- プレゼンテーション:提案を相手に分かりやすく伝える力
- 交渉:価格や条件について、双方が納得できる合意をつくる力
- 商品・業界知識:自社の商品と、顧客の業界についての知識
- 案件管理:複数の案件の進み具合を把握し、手を打つ力
スキルを洗い出す手順はスキルマップの作り方を参考にできます。
レベル定義の例(ヒアリング)
「ヒアリング」を5段階で定義した例です。
| レベル | 状態の例 |
|---|---|
| Lv1 | 用意した質問を順に聞いているが、相手の答えをまだ掘り下げられていない |
| Lv2 | 相手の答えに対して「なぜ」「たとえば」と聞き返し、課題を具体的にしている |
| Lv3 | 課題・予算・導入の時期・決裁する人を聞き出し、提案の方向を自分で決めている |
| Lv4 | 相手が気づいていない課題を、質問を通して引き出している |
| Lv5 | 自分のヒアリングの型をまとめ、同行や勉強会で後輩に教えている |
Lv3を一人前の標準に置き、提案に必要な情報を自分で集められる状態を期待水準にしています。Lv5は「人に教えられる」状態とし、チームの営業力を上げる役割につなげています。
等級による期待レベルの違い
同じスキルでも、等級によって求めるレベルを変えます。
- 若手・入社間もない社員:Lv2〜3。基本の型を身につけることを期待する
- 中堅社員:Lv3〜4。自分で案件をつくり、大きな案件も任せられる状態を期待する
- リーダー・管理職:Lv4〜5。自分のやり方をチームに広げることを期待する
期待レベルを本人に先に伝えておくと、次の期に何を伸ばせばよいかがはっきりします。
チームへの貢献をどう評価するか
営業は個人の数字が目立つ職種ですが、チームの成果は、メンバー同士の情報共有や助け合いにも支えられています。チームへの貢献を項目にしないと、協力する人ほど損をする評価になります。
貢献を行動で書く
チームへの貢献は、「協調性がある」のようなあいまいな言葉ではなく、行動で書きます。
- 受注につながった提案資料や成功事例を、チームで使える形に共有している
- 後輩の商談に同行し、終わった後に良かった点と直す点を伝えている
- 自分の担当外でも、顧客から聞いた情報を担当者に引き継いでいる
- 繁忙期に、ほかのメンバーの見積・資料作成を手伝っている
チームの成果と個人の成果を両方見る
チームの目標達成を評価の一部に入れると、メンバー同士で助け合う理由ができます。ただし、チームの成果だけで評価すると、誰がどれだけ貢献したかが見えなくなります。
個人の成果を中心に置き、チームの成果を一部に組み合わせるのがおすすめです。リーダーや管理職ほど、チームの成果の比重を高めにします。
共同で取った案件の扱いを決めておく
複数の営業で取った案件や、他部署の紹介で取った案件は、成果を誰につけるかで揉めやすい部分です。
「紹介した人と受注した人に半分ずつつける」「主担当につけ、協力した人はプロセスで評価する」のように、期初にルールを決めておきます。
成果・プロセス・スキルの比重の決め方
3つの比重は、営業のスタイルと等級によって変えます。次の比重は一例です。
| 対象 | 成果 | プロセス | スキル |
|---|---|---|---|
| 入社1〜2年目の営業 | 30% | 40% | 30% |
| 中堅の営業(ルート営業) | 50% | 30% | 20% |
| 中堅の営業(新規開拓) | 40% | 40% | 20% |
| 営業リーダー・管理職 | 60%(チームの成果を含む) | 20% | 20% |
経験の浅い社員は、成果よりもやり方を身につけることを重視して、プロセスとスキルの比重を高めにします。等級が上がるほど、成果の比重を高めます。
比重を決めたら、その理由も記録しておきます。制度を見直すときや、社員に説明するときの根拠になります。評価制度全体の組み立て方は人事評価制度の作り方で解説しています。
営業職の評価を運用するときのコツ
項目と基準ができても、運用しだいで評価の納得感は変わります。期初・期中・期末に、上司と本人が話す機会をつくります。
期初に目標の難しさをそろえる
担当の顧客や地域によって、同じ目標でも難しさが違います。期初の面談で、上司が担当の条件を踏まえて目標の難しさをそろえます。
大口顧客の倒産や担当替えのような大きな変化があったときは、期末ではなく期中に目標を見直すルールにしておきます。目標の書き方は目標設定の書き方と例文で紹介しています。
案件の記録をプロセス評価の材料にする
営業日報や案件管理表の記録は、プロセスを評価する材料になります。期末に思い出して評価すると、直近の大きな受注に評価が引きずられます。
月に1回程度、上司と本人で案件の動きを振り返り、評価につながる出来事をメモしておきます。
結果の理由と次の打ち手まで話す
評価面談では、点数を伝えるだけでなく、受注できた理由・失注した理由を一緒に振り返ります。プロセスとスキルの評価があれば、「この行動は続けよう」「ヒアリングをここまで深めよう」と次の期の行動まで話せます。
JOB COMPASSの評価シート自動生成では、業種を選ぶとテンプレートから評価項目とスキルが用意され、名前も配点もそのまま編集できます。この記事の例から営業職向けの項目を足していけば、評価シートをゼロから作らずに始められます。
まとめ
- 営業職の評価項目は、成果・プロセス・スキルの3つに分けて考えます。
- 売上だけで評価すると、担当の差が点数に出て、短期の数字を優先する行動が増えます。
- 新規開拓・ルート営業など営業のスタイルによって、見る項目と比重を変えます。
- 成果は売上に粗利や回収を並べ、プロセスとスキルは上司が確かめられる行動とレベルで定義します。
- チームへの貢献も行動で項目にし、共同で取った案件の扱いは期初に決めておきます。
まずは社内で成果を上げている営業が「ふだん何をしているか」を書き出すところから始められます。
よくある質問
営業職は売上の数字だけで評価してもよいですか?
おすすめしません。売上は担当の顧客や地域、景気によって大きく変わるため、数字だけでは本人の努力や力が評価に表れにくくなります。
売上を中心に置きつつ、プロセスとスキルの項目を組み合わせると、成果が出なかった期でも取り組みの良し悪しを評価できます。
目標を達成した営業と、未達だが難しい担当を任された営業はどう評価しますか?
期初の目標設定の段階で、担当の条件を踏まえて目標の難しさをそろえておくのが基本です。難しい担当を任された人の目標は、その条件に合わせて設定します。
そのうえで、難しい目標に挑戦した場合は評価を一段上げられるルールを設けたり、プロセスの評価で取り組みを反映したりすると、不公平感を減らせます。
営業事務やアシスタントにも、営業担当と同じ評価項目を使えますか?
同じ項目をそのまま使うのはおすすめしません。営業事務やアシスタントの仕事の中心は、受注そのものではなく、営業担当が成果を出せるよう支えることだからです。
見積書や受発注の処理の正確さ、営業担当や顧客からの依頼への対応の早さなど、その仕事の成果とプロセスで項目を作ります。営業部の中でも、職種ごとに項目を分けておきます。
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