人材育成計画の作り方を、目的の決め方、スキルの現状と目標の差の把握、OJT・研修・自己啓発の組み合わせ、実行と見直しまでの6つの手順で解説。会社全体と個人の計画の例も紹介します。
この記事でわかること
- 人材育成計画は「誰が・何を・いつまでに・どうやって」身につけるかを決めた計画
- 目的→現状把握→目標との差→手段→日程→見直しの6つの手順でつくる
- 研修だけに頼らず、仕事を任せるOJTと面談での振り返りを組み合わせると続きやすい
目次
人材育成計画とは、社員が「何を・いつまでに・どうやって」身につけるかを決めた計画です。会社や部署の方針から必要な力を決め、今の力との差を、仕事の経験と研修を組み合わせて埋めていきます。
つくるときは、目的を決め、現状を把握し、目標との差から手段と日程を決めて、定期的に見直す流れで進めます。
この記事では人材育成計画の目的、作り方の6つの手順、会社全体と個人の計画の例、計画倒れにしない工夫を紹介します。
人材育成計画とは
人材育成計画は育成を思いつきや本人まかせにせず、会社として順序立てて進めるための計画です。研修の予定表とは違い、「どんな力を持つ人が何人必要か」から逆算してつくります。
会社全体の計画と個人の計画
人材育成計画には大きく2つの層があります。
| 層 | 決めること | つくる人 |
|---|---|---|
| 会社全体・部署の計画 | 数年後に必要な人材像と人数、全社で行う研修、育成の予算と年間の日程 | 経営者・管理職 |
| 個人の育成計画 | 一人ひとりが次の半年〜1年で身につけること、任せる仕事、振り返りの時期 | 本人・上長 |
小さな会社なら、会社全体の計画は1枚の方針にまとめ、個人の計画に力を入れるほうが現実的です。会社の方針がないまま個人の計画だけをつくると、育成の方向が人によってばらばらになります。
研修計画・キャリアパスとの違い
研修計画は育成の手段のうち研修の実施予定をまとめたものです。人材育成計画は研修に加えて、仕事を通じた育成や自己学習の支援まで含みます。
キャリアパスは社内でどのように進んでいけるかの道筋を示したものです。人材育成計画はその道筋を進むために今期は何を身につけるかを決めるもの、と考えると整理しやすくなります。キャリアパスのつくり方はキャリアパスとは?で紹介しています。
人材育成計画をつくる目的
人材育成計画をつくる目的は次の3つにまとめられます。
- 退職や事業の拡大で足りなくなる役割を見すえて、必要な人材を前もって計画的に育てる
- 育成の優先順位を決めて、限られた時間と予算を効果の大きいところから使う
- 何を身につければ次に進めるかを示して、本人が成長の見通しを持ち、意欲的に学べるようにする
計画がないと、育成は手が空いた時期に思い出したように行うものになりがちです。教える内容が指導する人の得意分野に偏ったり、同じ人ばかりが研修に出たりすることもあります。
人材育成計画がうまくいかない原因
人材育成計画をつくっても、実行されずに終わる会社は少なくありません。よくある原因は次のとおりです。
- 目的があいまいで、研修を並べただけの計画になっている
- 社員の今の力を把握しないまま、全員に同じ内容を当てはめている
- 研修に出すことが目的になり、職場で使う機会がない
- 現場の上長が計画の中身を知らず、日々の仕事に結びついていない
- つくったあとに振り返る時期を決めていない
とくに見落としやすいのは現状を把握しないまま計画を立ててしまうことです。誰が何をどこまでできるかが分からなければ、何を優先して育てるべきかも決められません。
人材育成計画の作り方6つの手順
人材育成計画は次の6つの手順でつくります。
- 育成の目的と人材像を決める
- 社員の現状を把握する
- 目標との差を確かめ、優先順位をつける
- 育成の手段を組み合わせる
- 担当者と日程を決める
- 実行して、定期的に見直す
1. 育成の目的と人材像を決める
最初に、会社や部署の方針から「数年後にどんな人が何人必要か」を書き出します。たとえば「2年後に新店を出すので、店長を任せられる人があと2人必要」のように、事業の予定と結びつけます。
人材像は等級や役割ごとに、「何ができる人か」を行動の言葉で書きます。等級制度がある会社なら、各等級の定義をもとに人材像を書けます。
2. 社員の現状を把握する
次に、社員一人ひとりが今どのような仕事を任されていて、どのスキルをどのレベルで持っているかを確かめます。
このとき、スキルマップを使うと全体を一覧で見られます。スキルマップのつくり方はスキルマップとは?で詳しく紹介しています。
本人の自己申告と上長の見立ての両方を集めると、思い込みによるずれを減らせます。あわせて、本人が今後やってみたい仕事や、伸ばしたい力も面談で聞いておきます。
3. 目標との差を確かめ、優先順位をつける
人材像と現状を並べ、差の大きいところを洗い出します。すべての差を一度に埋めようとすると、どれも中途半端になりがちです。
優先順位は次の点を踏まえて決めます。
- 事業の予定に照らして、急いで必要な役割かどうか
- その人の今の仕事や次の役割で、使う頻度が高いかどうか
- 社内に教えられる人や、試せる仕事があるかどうか
個人の計画では半年〜1年で取り組むテーマを1つか2つに絞るのが目安です。
JOB COMPASSのギャップ分析では、メンバーごとに今のスキルと目標レベルとの差が大きい順に並びます。基準を職種等級要件に切り替えれば、今の等級に求められるレベルに届いていないスキルも確かめられます。
4. 育成の手段を組み合わせる
育成の手段は主に次の3つです。
| 手段 | 内容 | 向いていること |
|---|---|---|
| OJT | 実際の仕事を任せ、上長や先輩が指導する | 職場特有の業務、判断の仕方、顧客対応 |
| Off-JT(研修) | 職場を離れて研修や講習を受ける | 基礎知識、考え方の型、資格の取得 |
| 自己啓発の支援 | 本人の学習を、費用や時間の面で会社が支える | 専門知識、本人が伸ばしたい分野 |
中小企業ではOJTを中心にし、足りない部分を研修や自己啓発で補う組み合わせが現実的です。研修を受けたら、学んだことを試せる仕事をすぐに任せると、職場で使える力になりやすくなります。
仕事を任せるときは、「何をどこまで任せるか」と「困ったときに誰に相談するか」を先に決めておきます。
5. 担当者と日程を決める
手段が決まったら、誰がいつまでに何をするかを決めます。
- 指導を担う人(上長、先輩、社外の講師など)
- 研修や任せる仕事の時期
- 中間の振り返りと、期末の振り返りの時期
日程は評価のスケジュールと合わせると忘れにくくなります。たとえば、期初の目標設定で育成のテーマを決め、期中の1on1で進み具合を確かめ、期末の評価面談で振り返る形です。評価の年間の流れは人事評価の年間スケジュールで紹介しています。
6. 実行して、定期的に見直す
計画は実行しながら見直していくものです。半年に1回など時期を決めて、身についたことと、計画どおりに進まなかったことを確かめます。
見直しでは研修を受けた回数より、仕事でできるようになったことに目を向けます。「Lv2からLv3に上がった」「一人で見積もりを出せるようになった」のように、行動の変化で確かめると次の計画を立てやすくなります。
人材育成計画の例
ここでは社員30人ほどの会社を想定した例を紹介します。
会社全体の計画の例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 育成の目的 | 2年後の新店の出店に向けて、店長を任せられる人を2人育てる。あわせて、全社員の接客の基礎をそろえる |
| 求める人材像 | 店長:売上と人員の計画を立て、スタッフを指導できる人。一般スタッフ:基本の接客と衛生管理を一人でできる人 |
| 重点的に育てる対象 | 店長候補の副店長3人、入社2年目までのスタッフ |
| 主な手段 | 店長候補には店長の業務を一部任せるOJTと、外部のマネジメント研修。若手には先輩によるOJTと社内の勉強会 |
| 日程 | 4月に個人の計画を決める。10月と翌年3月に振り返り、計画を見直す |
個人の育成計画の例
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 対象者 | 副店長(入社5年目) |
| 次の役割 | 店長 |
| 今できていること | 売場の運営とスタッフのシフト作成を一人でできる |
| 身につけること | 月次の売上計画を立て、実績との差の理由を説明できる。新人スタッフの指導計画を立てられる |
| 任せる仕事 | 6月から店長と一緒に月次計画を作成し、9月からは一人で作成する。新人1人の指導を担当する |
| 研修・学習 | 7月に外部のマネジメント研修(2日間)を受ける |
| 指導を担う人 | 店長 |
| 振り返りの時期 | 毎月の1on1で進み具合を確かめ、10月の評価面談で振り返る |
個人の計画は、上長が一方的に決めるより、本人と面談で話し合って決めるほうが続きやすくなります。本人がやってみたいことを1つ入れておくと、取り組む意欲が高まります。
計画倒れにしない工夫
人材育成計画はつくることより続けることのほうが難しいものです。
現場の上長を計画づくりに巻き込む
個人の計画は、日々の仕事を任せる上長が中心になってつくります。経営者や総務の担当者だけでつくると、現場で任せられる仕事と合わなくなります。
部下の育成を上長の評価項目に入れておくのも一つの方法です。部下を育てた働きが評価されないと、育成は後回しにされやすくなります。管理職の評価項目の例は管理職の評価項目と評価基準の例で紹介しています。
面談で進み具合を確かめる
月1回の1on1など、短い面談で進み具合を確かめる時間を決めておきます。困っていることがあれば早めに手を打てますし、できるようになったことを本人と一緒に確かめられます。
面談の進め方は1on1面談とは?で紹介しています。
書く量を減らして、毎年使い回す
計画の様式が細かすぎると、つくるだけで疲れてしまいます。1人1枚の表に収まる量にし、前の期の計画を直して使い回せるようにしておきます。
スキルの現状と目標をスキルマップで管理していれば、計画をつくり直すたびに一から洗い出す手間が減ります。
まとめ
- 人材育成計画は、社員が「何を・いつまでに・どうやって」身につけるかを決めた計画です。
- 会社全体の方針と、一人ひとりの計画の2つの層でつくります。
- 目的と人材像を決め、現状を把握し、目標との差から優先順位をつけて、手段と日程を決めます。
- 手段はOJTを中心にし、研修と自己啓発の支援で補うと続けやすくなります。
- 半年に1回などの時期を決めて、行動の変化で振り返り、計画を見直します。
最初は次の期に重点的に育てたい人を数人選び、その人たちの個人の計画を1枚ずつつくるところから始められます。
よくある質問
人材育成計画はどのくらいの期間でつくればよいですか?
会社全体の計画は2〜3年先を見すえてつくり、個人の計画は半年〜1年ごとにつくるのが目安です。
個人の計画は評価の期間と合わせると、期初に決めて期末に振り返る流れに乗せやすくなります。
人材育成計画は社員本人に見せるべきですか?
個人の育成計画は本人と話し合って決め、内容を共有するのが基本です。本人が計画を知らなければ、何を目指して取り組めばよいかが分かりません。
一方、会社全体の計画のうち、後継者の候補など人事の検討にかかわる部分は、共有の範囲を会社で決めておきます。
教える人が足りない場合はどうすればよいですか?
まず、社内で誰がどのスキルを教えられるかを確かめます。管理職だけでなく、特定の業務に詳しい先輩社員に指導役を任せる方法もあります。
社内で教えられない分野は外部の研修や講習、本人の自己学習の支援で補います。すべてを社内で教えようとしないほうが、計画を続けやすくなります。
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