製造業の人事評価で使える評価項目を、安全・品質・生産性・技能・改善の5つに分けて例で紹介。技能レベルの定義、多能工化の評価、班長・リーダーの見方、交替勤務での運用のコツも解説します。
この記事でわかること
- 製造現場の評価は、安全・品質・生産性・技能・改善の5つで考えると整理しやすい
- 個人の数字が出にくいので、守った手順と身につけた技能を項目にする
- 多能工化は「できる工程の数」と「各工程のレベル」を分けて見る
目次
製造業の人事評価は安全・品質・生産性・技能・改善の5つに分けて項目を作ると整理しやすくなります。生産量のような数字だけでなく手順を守る行動と、身につけた技能を評価に入れるのがポイントです。
製造現場はライン全体で成果を出す仕事です。個人の成果が数字に表れにくいぶん、「何ができるようになったか」を具体的に書けるかどうかで、評価の納得感が変わります。
この記事では製造業の評価項目の例、技能レベルの定義、多能工化の評価、班長・リーダーの見方、交替勤務での運用のコツを紹介します。
製造業の人事評価が難しい理由
製造業の評価には、ほかの職種にはない難しさがあります。先に課題を整理しておくと、項目を選ぶときに迷いにくくなります。
個人の成果が数字に表れにくい
生産量や不良率はライン全体や班の単位で出ることがほとんどです。ある人がどれだけ貢献したかを、数字だけで切り分けるのは困難です。
担当する設備や製品によっても、作業の難しさは変わります。数字だけで比べると、難しい工程を任された人ほど評価が下がることもあります。
「問題が起きないこと」が成果になる
安全や品質の仕事は事故や不良が出ないことが成果です。何も起きなかった期は、本人の取り組みが目に見えません。
結果だけを見ていると、事故や不良が出たときの減点ばかりが残ります。減点だけの評価では、手順を守り続けた人の働きが評価に表れません。
上長が全員の作業を見られない
ひとりの班長や職長が多くのメンバーを受け持つことは珍しくありません。交替勤務があると、上長と顔を合わせない時間帯に働く人も出てきます。
ふだんの作業を見ていないまま期末に評価すると、目立った出来事だけで評価が決まりがちです。
評価項目は「安全・品質・生産性・技能・改善」で考える
製造現場の評価は次の5つに分けて項目を作ると、偏りの少ない評価になります。
- 安全:決められた手順と保護具を守り、危険を見つけて報告しているか
- 品質:作業標準どおりに作業し、異常に気づいて止められるか
- 生産性:段取りや作業の進め方を工夫し、計画どおりに生産できているか
- 技能:担当工程の作業、設備の扱い、検査などの力がどこまで身についたか
- 改善:ムダや困りごとを見つけ、やり方を変える提案をしているか
安全と品質は結果ではなく守った行動で書きます。生産性は個人ではなく班の数字を参考にしながら、本人の工夫を見ます。
技能と改善はほかの人と比べるより、前の期の自分からどれだけ伸びたかで見ると、本人が次に何をすればよいかがはっきりします。成果とプロセスの考え方は業績評価とは?で詳しく解説しています。
安全・品質の評価項目の例
安全と品質の項目は上長が見て確かめられる行動として「〜している」の形で書きます。結果の数字は班の目標として別に置きます。
安全の項目例
- 作業前に保護具を正しく着け、設備の点検表に記入している
- ヒヤリとした出来事を、その日のうちに報告している
- 危険予知活動(KY活動)で、自分の作業に潜む危険を具体的に挙げている
- 決められた手順を省いている人を見たら、声をかけている
ヒヤリハットについては、起きた件数ではなく報告した行動を評価します。ヒヤリとした出来事を報告した人の評価が下がる仕組みにすると、報告そのものが出てこなくなります。
品質の項目例
- 作業標準書どおりの手順で作業し、変えたいときは上長に相談している
- いつもと違う音やにおい、寸法のずれに気づいたら、ラインを止めて報告している
- 不良が出たとき、原因の調査と再発防止の対策に加わっている
- 自分の工程で確かめた結果を、次の工程へ正確に引き継いでいる
「異常に気づいて止める」行動は評価で特に認めたい点です。止めたことで生産が遅れても、それを減点にしない方針を先に伝えておきます。
生産性・改善の評価項目の例
生産性と改善は本人の工夫が表れやすい項目です。結果の大きさより、取り組んだ中身を見ます。
生産性の項目例
- 段取り替えの手順を覚え、決められた時間内に終えている
- 生産計画を見て、材料や工具を前もって準備している
- 遅れが出そうなときに、早めに班長へ相談している
- 職場の整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(5S)を、自分の持ち場で続けている
改善の項目例
- 作業のムダや困りごとを見つけ、改善の提案を出している
- 提案した改善を、班のメンバーと一緒に試している
- うまくいった改善のやり方を、ほかの工程にも広げている
改善提案の件数を目標にするときは、件数だけで見ないようにします。小さな提案でも、実際に作業が楽になったかどうかを面談で話すと、提案の質が上がりやすくなります。
技能レベルの定義の例
技能の評価は工程や設備ごとにレベルを定義すると、評価者による差が小さくなります。ここでは「担当工程の作業」を5段階で定義した例を紹介します。
| レベル | 状態の例 |
|---|---|
| Lv1 | 指導者がそばにいれば、手順書を見ながら作業できる |
| Lv2 | 手順書を見ながら、ひとりで作業できる |
| Lv3 | 手順書を見ずに、決められた時間と品質で作業できる |
| Lv4 | 異常が起きたときに原因の見当をつけ、決められた範囲で対処できる |
| Lv5 | 作業のやり方を後輩に教え、手順書の見直しを提案できる |
Lv3を一人前の標準に置き、ひとりで任せられる状態を期待水準にしています。Lv5は「人に教えられる」状態とし、技能を現場に広げる役割につなげています。
資格・検定の扱い
フォークリフトやクレーンの運転、溶接、技能検定など、製造現場には仕事に関わる資格が多くあります。資格は技能を評価するときの材料のひとつとして扱うのがおすすめです。
資格を持っていることと、現場で使いこなせることは同じではありません。資格の有無は等級の要件や手当に使い、技能の評価では実際の作業のレベルを見ると、同じ資格を二重に数えることを防げます。
フォークリフトの運転のように、法令で資格や講習の修了が求められる作業もあります。こうした資格は評価の加点ではなくその作業を任せる前提として扱います。
多能工化をどう評価するか
多能工化はひとりが複数の工程や設備を担当できるようにする取り組みです。休みや欠員が出てもラインが止まりにくくなり、特定の人しかできない作業を減らせます。
「できる工程の数」と「各工程のレベル」を分ける
多能工化を評価するときは、次の2つを分けて見ます。
- 幅:いくつの工程・設備を担当できるか
- 深さ:それぞれの工程で、どのレベルまでできるか
工程の数だけを数えると、浅く広く覚えるほど評価が上がってしまいます。主に担当する工程はLv3以上、ほかの工程はLv2以上のように、工程ごとに求めるレベルを決めておきます。
スキルマップで現場の状態を見える化する
工程を行、メンバーを列にした表にレベルを書き込むと、誰がどの工程をどこまでできるかが1枚で分かります。ある工程をできる人が1人しかいなければ、次に誰が覚えるかを決めるきっかけになります。
表の作り方はスキルマップの作り方で解説しています。期ごとに見比べると、一人ひとりが前の期からどれだけ工程を増やし、レベルを上げたかも分かります。
教えた人の働きも評価に入れる
多能工化は教える人がいて初めて進みます。新しい工程を覚えた人だけでなく、教えた人の働きも評価の対象にします。
「後輩が新しい工程でLv2になるまで指導した」のように、教えた結果を行動で書くと、上長も評価しやすくなります。
班長・リーダーの評価で見ること
班長や職長、リーダーは、自分の作業に加えて、班全体の安全・品質・生産と、メンバーの育成を担います。メンバーと同じ項目で評価すると、この役割が評価に表れません。
- 班の成果:班の生産計画の達成、不良や事故を減らす取り組み
- 育成:メンバーの技能レベルを上げる計画と指導、多能工化の進め方
- 職場づくり:朝礼や引き継ぎでの情報共有、困りごとを相談しやすい雰囲気
- 改善の推進:メンバーの提案を拾い上げ、試す場をつくること
班長になったばかりの人は、自分で作業するほうが早いと感じて、つい教える時間を削りがちです。育成の項目の比重を高めにしておくと、教えることも班長の仕事だと伝わります。
管理職全体の評価項目は管理職の評価項目と評価基準の例で紹介しています。
交替勤務の現場で評価を回すコツ
項目と基準ができても、上長が作業を見られなければ評価は難しくなります。交替勤務のある現場では、上長が見られない部分を記録と対話で補います。
評価の材料を日々の記録に残す
日報、点検表、ヒヤリハット報告、改善提案などは、そのまま評価の材料になります。期末に思い出して評価すると、直近の目立った出来事に評価が引きずられます。
上長が見ていない時間帯の働きは、勤務帯の引き継ぎメモや、その時間帯を受け持つ班長の話も参考にします。
月に1回、短く振り返る
半年に1回の評価面談だけでは、話すことを思い出せません。月に1回、10分程度でも上長と本人で振り返ると、身についた技能や取り組んだ改善を記録に残せます。
勤務帯が合わないときは、勤務の切り替わりの前後に時間を取るなど、話す時間を先に決めておきます。
評価の流れを現場の繁忙期と重ねない
生産の繁忙期や棚卸しの時期に評価の締め切りを重ねると、評価が後回しになります。年間の流れの組み方は人事評価の年間スケジュールを参考にできます。
JOB COMPASSの評価シート自動生成では、製造業を含む業種テンプレートから評価項目とスキルが用意され、名前も配点もそのまま編集できます。工程をスキルとして登録しておけば、一人ひとりのレベルがスキルマップで1枚の表にまとまり、前の期と見比べることもできます。
まとめ
- 製造業の評価項目は安全・品質・生産性・技能・改善の5つに分けて考えます。
- 個人の数字が出にくいので、安全と品質は守った行動で、技能はレベルの定義で評価します。
- 技能と改善はほかの人との比較より、前の期の自分からの伸びで見ます。
- 多能工化は「できる工程の数」と「各工程のレベル」を分けて見て、教えた人の働きも評価します。
- 班長・リーダーの評価では班の成果と育成を項目にします。
- 交替勤務の現場では、上長が見られない部分を記録と月1回の振り返りで補います。
まずは主な工程を書き出し、一人ひとりが今どのレベルにいるかを表にするところから始められます。
よくある質問
製造現場の作業者に、目標を数字で立ててもらうべきですか?
すべてを数字にする必要はありません。生産量や不良率は班の単位で出ることが多いため、個人の目標は「新しい工程をLv2にする」「段取り替えを時間内に終えられるようにする」のような技能や行動で立てると、本人が取り組みやすくなります。
班の数字は個人の評価に直接入れるより、班全体で目指す目標として共有するのがおすすめです。
事故や不良を出した人は、評価を下げるべきですか?
結果だけで大きく下げるのはおすすめしません。原因が手順の不備や設備にあることも多く、本人だけを責めると、次から報告が出にくくなります。
手順を守っていたか、すぐに報告したか、再発を防ぐ対策に加わったかを見て評価します。決められた手順を繰り返し省いていた場合は、安全の項目の評価に反映し、面談で改め方を話し合います。
パート・アルバイトや派遣の人にも、同じ評価項目を使えますか?
自社で雇用しているパート・アルバイトには、担当する仕事の範囲に合わせて項目を絞って使えます。安全・品質の基本と、担当工程の技能レベルを中心にすると、短い時間で働く人にも分かりやすくなります。
派遣の人は派遣元の会社が雇用しているため、自社の人事評価の対象には含めないのが一般的です。働きぶりを派遣元へどう伝えるかは、派遣元と相談して別に決めておきます。
FEATURES