管理職の人事評価で使える評価項目を、組織成果・部下育成・方針浸透・組織運営の4つに分けて例で紹介。プレイヤーの評価との違い、レベル定義の例、プレイングマネージャーの比重の決め方も解説します。
この記事でわかること
- 管理職は「自分の成果」ではなく「チームを通じて出した成果」で評価する
- 項目は組織成果・部下育成・方針浸透・組織運営の4つに分けると整理しやすい
- プレイングマネージャーは、個人の成果とマネジメントの比重を役職ごとに決めておく
目次
管理職の評価は、本人がどれだけ成果を出したかではなくチームを通じてどんな成果を出したかで見ます。項目は「組織成果」「部下育成」「方針浸透」「組織運営」の4つに分けると整理しやすくなります。
ただし、中小企業では、管理職も自分で現場の仕事を担当するプレイングマネージャーであることがよくあります。その場合は、個人の成果とマネジメントの比重を役職ごとに決めておくことが欠かせません。
この記事では管理職の評価項目と評価基準の例、レベル定義の例、プレイングマネージャーの比重の決め方を紹介します。
管理職の評価はプレイヤーの評価と何が違うか
一般社員(プレイヤー)と管理職では、期待する役割が違います。評価の項目もその役割に合わせて変える必要があります。
| 観点 | プレイヤー | 管理職 |
|---|---|---|
| 成果の単位 | 自分の担当業務の成果 | チーム・部署全体の成果 |
| 主な仕事 | 自分で仕事を進める | 人と仕事を割り振り、チームを動かす |
| 育成 | 自分のスキルを伸ばす | 部下のスキルを伸ばす |
| 方針 | 会社の方針に沿って動く | 会社の方針を自分の言葉で部下に伝える |
| 時間の軸 | 今期の成果が中心 | 今期の成果と、来期以降に成果を出せるチームづくり |
いちばん大きな違いは成果を「自分で出す」のではなく「チームで出す」点です。管理職が一人で頑張って数字を作っても、部下が育たなければ、チームの力は上がりません。
等級制度の中で管理職の役割をどう定義するかは、等級制度とは?で解説しています。この記事では管理職の評価項目と基準の例に絞って紹介します。
管理職の評価でよくある失敗
管理職の評価は一般社員の評価に比べて後回しにされがちです。代表的な失敗は次の4つです。
プレイヤーの頃と同じ項目で評価している
管理職に昇格しても、評価シートが一般社員と同じままの会社は少なくありません。この場合、本人の売上や作業量で評価が決まり、部下の育成やチームづくりは評価に表れません。
その結果、管理職は自分の数字を優先し、部下に仕事を任せなくなりがちです。
部下を育てた努力が評価されない
部下の育成は、成果が出るまでに時間がかかります。今期の数字だけで評価すると、部下に時間を使った管理職ほど評価が低く出ることがあります。
育成を項目にしないと、「自分でやったほうが早い」という判断が続き、チームに次の担い手が育ちません。
「リーダーシップ」などのあいまいな言葉で評価している
「リーダーシップがある」「統率力がある」のような言葉は、評価者によって受け取り方が変わります。何をしていれば高い評価なのかが分からず、本人も次に何を変えればよいか分かりません。
管理職の項目も一般社員と同じように「〜している」という行動の形で書くと、評価がぶれにくくなります。
経営者一人の評価で根拠が残らない
中小企業では、管理職を評価するのは社長一人ということがよくあります。社長の印象だけで決まり、根拠が記録に残らないと、管理職本人も評価に納得しにくくなります。
期初に役割と目標を合意し、期中の出来事を記録しておくことで、根拠のある評価になります。
管理職に期待する役割を4つに分ける
管理職の評価項目は期待する役割から考えます。管理職の役割は次の4つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 組織成果:チーム・部署として、目標の成果を出す
- 部下育成:部下の力を伸ばし、任せられる仕事を増やす
- 方針浸透:会社の方針や目標を、部下の行動に落とし込む
- 組織運営:仕事の割り振り・業務の改善・職場の環境づくりを通じて、チームが動ける状態を保つ
役職ごとに比重を変える
同じ4つの役割でも、役職によって期待する範囲が違います。ここでは管理職の手前にあたる主任・リーダーも含めて整理します。
- 主任・リーダー:数人のメンバーのまとめ役。多くの会社では管理職の手前の役職にあたる。自分の仕事に加え、後輩への指導と日々の仕事の割り振りを期待する
- 課長:部署の目標に責任を持つ。チームの成果と部下育成の比重を高くする
- 部長:複数の部署や事業を見る。方針を立てて浸透させること、次の管理職を育てることを期待する
役割の書き方はキャリアパスの作り方で紹介している「各段階の役割と求めるスキル」とそろえておくと、社員にとっても次に何を目指せばよいかが分かりやすくなります。
組織成果の評価項目と評価基準の例
組織成果の項目は何で測るか(指標)と、どこまでできたら標準か(基準)をセットで決めます。
| 評価項目 | 指標の例 | 基準の決め方 |
|---|---|---|
| 部署目標の達成 | 部署の売上・生産量・処理件数などの目標達成率 | 期初に部署目標を経営者と合意し、達成率を段階に置き換える |
| 利益・コストの管理 | 部署の粗利・経費・残業時間 | 売上だけを追って経費や残業を増やしていないかを合わせて見る |
| 品質・顧客満足 | クレーム件数・不良率・納期遵守率 | 部署の仕事の質を表す指標を1〜2個選ぶ |
| 重点課題の達成 | 新サービスの立ち上げ・業務の仕組み化など | 期初に「何をいつまでに」を決め、達成の状態を具体的に書いておく |
部署の数字は景気や担当する事業によって上下します。数字だけで評価せず、目標の難しさを期初にそろえておくことが大切です。
成果の指標と達成率を段階に置き換える方法は、業績評価とは?で例を紹介しています。
部下育成の評価項目とレベル定義の例
部下育成は、成果が出るまでに時間がかかるため、管理職の評価で見落とされやすい項目です。結果(部下が育ったか)と、行動(育てるために何をしたか)の両方で見ます。
部下育成の行動の例
- 部下一人ひとりの強みと課題を把握し、期初に育成の目標を一緒に決めている
- 定期的に1on1を行い、仕事の進み具合だけでなく困りごとや今後の希望も聞いている
- 部下に少し難しい仕事を任せ、途中で相談に乗りながら最後までやり切らせている
- 評価の結果を根拠と次の期待を添えて本人に伝えている
- 自分の仕事のやり方を手順書や勉強会で共有し、チームの誰でもできる状態にしている
1on1の進め方や質問の例は1on1で使える質問例で紹介しています。
部下育成の結果の例
- 部下のスキルが期初に決めた目標のレベルに近づいたか
- 管理職がいなくても回る仕事が増えたか
- 次のリーダー候補が育っているか
部下のスキルの伸びは部下本人の努力や経験年数、担当する仕事にも左右されます。結果だけで管理職を評価せず、育てるための行動とセットで見ます。
レベル定義の例(部下育成)
「部下育成」を5段階で定義した例です。
| レベル | 状態の例 |
|---|---|
| Lv1 | 部下から聞かれたことには答えるが、育成の計画はまだ立てていない |
| Lv2 | 部下ごとの課題を把握し、仕事の中で指導している |
| Lv3 | 部下ごとに育成の目標を決め、仕事の任せ方と面談で計画的に育てている |
| Lv4 | 部下が自分で判断して進められる仕事を増やし、チームの力を底上げしている |
| Lv5 | 次の管理職候補を育て、自分がいなくても部署が回る状態をつくっている |
Lv3を管理職の標準に置き、「計画的に育てている」状態を期待水準にしています。等級が上がるほど、Lv4〜5を期待します。
方針浸透・組織運営の評価項目の例
方針浸透と組織運営は数字に表れにくい分、行動で項目を書きます。
方針浸透の例
- 会社の方針や部署目標を部下の仕事に結びつけて自分の言葉で説明している
- 部署目標を部下一人ひとりの目標に分けて割り振っている
- 経営者の決定を部下に伝えるとき、背景や理由も合わせて伝えている
- 現場の意見や課題を経営者や他部署に正確に伝えている
方針浸透は上から下へ伝えるだけではありません。現場の声を経営に伝えることも、管理職の大事な役割です。
組織運営の例
- 部下の仕事量と得意分野を踏まえて、仕事を割り振っている
- 特定の人に仕事が偏らないよう、担当の見直しや手順の共有をしている
- 業務の無駄や問題に気づいたとき、改善の案を出して実行している
- 部下が相談しやすく、失敗を報告しやすい雰囲気をつくっている
- 部下の勤務状況や体調の変化に気を配り、必要に応じて声をかけている
ここまでの例を全部入れる必要はありません。4つの役割を合わせて、管理職1人あたり8〜10個程度を目安に、役職と今期の課題に合わせて選びます。
プレイングマネージャーの評価の比重
中小企業では、部下を見ながら自分も現場の仕事を担当する管理職が少なくありません。個人の成果とマネジメントのどちらで評価するかを決めておかないと、本人もどちらに時間を使えばよいか迷います。
次の比重は一例です。
| 対象 | 個人の成果 | 組織成果 | 部下育成 | 方針浸透・組織運営 |
|---|---|---|---|---|
| 主任・リーダー | 50% | 20% | 20% | 10% |
| 課長(プレイングマネージャー) | 30% | 30% | 25% | 15% |
| 課長(マネジメント専任) | 0% | 45% | 30% | 25% |
| 部長 | 0% | 50% | 25% | 25% |
役職が上がるほど、個人の成果の比重を下げ、チームの成果と育成の比重を上げます。主任・リーダーの段階から部下育成を少しでも項目に入れておくと、管理職になってから急に役割が変わる戸惑いを減らせます。
比重を決めたら、その理由も記録しておきます。評価制度全体の組み立て方は人事評価制度の作り方で解説しています。
管理職の評価を運用するときのコツ
管理職の評価は項目を作るだけでは機能しません。期初・期中・期末に、評価者と管理職が話す機会をつくります。
期初に役割と重点課題を合意する
期初の面談で、今期の部署目標と、管理職として特に取り組む課題を合意します。「部下Aさんを一人で顧客対応できるようにする」のように、育成の目標も具体的に決めておきます。
部下の声は「気づきの材料」として使う
管理職の日々の行動は上司よりも部下のほうが近くで見ています。部下へのアンケートや360度評価で声を集めると、上司一人では見えない行動が分かります。
ただし、部下の声をそのまま点数にすると、厳しい指導をする管理職ほど評価が下がる「人気投票」になりかねません。集めた声は、本人が自分の行動を見直す材料として使うのがおすすめです。進め方は360度評価とは?で解説しています。
評価の結果を管理職の育成につなげる
管理職も評価を受けて成長する立場です。評価面談では部署の成果だけでなく部下の育成やチームの運営でうまくいったことと、次の期に変えることを話します。
JOB COMPASSの職種・等級では、職種×等級ごとに役割・期待する成果・求めるスキル・昇格の条件を書いておけます。評価方式を「等級連動版」にした評価期間では、評価や面談の画面に本人の等級と期待役割が表示されるので、管理職に何を期待しているかを確かめながら評価できます。
まとめ
- 管理職は本人の成果ではなくチームを通じて出した成果で評価します。
- 項目は組織成果・部下育成・方針浸透・組織運営の4つに分けると整理しやすくなります。
- 部下育成は結果(部下が育ったか)と行動(育てるために何をしたか)の両方で見ます。
- プレイングマネージャーは個人の成果とマネジメントの比重を役職ごとに決めておきます。
- 部下の声は点数にせず、管理職本人が行動を見直す材料として使います。
まずは自社の管理職に「何を期待しているか」を、4つの役割に沿って書き出すところから始められます。
よくある質問
部下のいない管理職(専門職)はどう評価すればよいですか?
部下育成や組織運営の項目をそのまま当てはめるのではなく専門性を生かした成果と、知識を社内に広げる行動で評価します。
たとえば、専門分野での成果や難しい課題の解決に加え、手順書づくりや勉強会、若手への助言など、自分の知識をチームに残す行動を項目にします。
部下の離職を管理職の評価に入れるべきですか?
離職の件数をそのまま点数にするのはおすすめしません。離職には家庭の事情や転居など、管理職が変えられない理由も含まれるためです。
点数にすると、管理職が部下の退職の意向を上に報告しにくくなったり、無理な引き止めにつながったりするおそれもあります。代わりに、部下の変化に早く気づいて話を聞いているか、仕事の偏りを直しているかといった行動を、組織運営の項目で評価します。
社長一人で管理職を評価してもよいですか?
社員の少ない会社では、社長一人で評価することは珍しくありません。期初に役割と目標を合意し、期中の出来事を記録して、根拠を説明できるようにしておくことが大切です。
役員など社長以外にも管理職の仕事ぶりを見ている人がいれば、意見を聞いてから決めると、社長一人の印象に偏りにくくなります。
FEATURES