部下への評価フィードバックの伝え方を、面談の準備・伝える順番・SBI型の言い方で整理。低評価の伝え方、反発されたときの対応、面談での会話例を紹介します。
この記事でわかること
- 評価フィードバックは「本人の振り返り→結果と根拠→次の期待」の順に伝えると受け止めてもらいやすい
- 個々の指摘は「場面・行動・影響」のSBI型で話すと、人柄の否定にならず事実が伝わる
- 反発されたら説得を急がず、本人の見方を聞いてから基準に戻って話す
目次
評価フィードバックでは、まず本人の振り返りを聞き、そのあと評価の結果と根拠、次の期への期待の順に伝えると、本人が結果を受け止めやすくなります。
一つひとつの指摘は「どの場面で・どんな行動が・どんな影響を生んだか」で話すと、人柄を否定せずに事実が伝わります。
この記事では、評価フィードバックの目的、伝わらない原因、面談前の準備、伝える順番とSBI型の言い方、面談の会話例、低評価の伝え方と反発されたときの対応を紹介します。
評価フィードバックとは
評価フィードバックとは、評価者が評価の結果とその理由を本人に伝え、次の期の行動につなげるための対話です。多くの会社では、期末の評価面談の中で行います。
評価シートにコメントを書いて渡すだけでは、本人が疑問を聞き返す機会がありません。面談で言葉を添えて伝えることで、評価の理由と次にやることを本人と確かめられます。
フィードバックの目的
評価フィードバックの目的は、主に次の3つです。
- 評価の理由を理解してもらう:なぜその結果になったのかを、基準と事実で説明する
- 次の期の行動を決める:伸ばす点と直す点を、具体的な行動に置き換える
- 上司と部下の認識をそろえる:期待している役割や仕事の水準のずれを解消する
結果を通知することだけが目的ではありません。面談のあと、本人が「次に何をすればよいか」を言えるようになっていれば、フィードバックは役目を果たしています。
評価コメントとの違い
評価コメントは評価の理由を書面に残したもので、評価フィードバックはその内容を本人と話し合う対話です。
書く内容の型は人事評価コメントの書き方と例文で紹介しています。この記事では、面談で「どう話すか」に絞って解説します。
評価フィードバックが伝わらない原因
評価の結果に納得してもらえない面談には、伝え方に共通した原因があります。
結果だけを先に告げてしまう
面談の冒頭で「今期はBです」と結果だけを告げると、本人の頭はその結果でいっぱいになります。
特に期待より低い結果だった場合、そのあとの説明が耳に入りにくくなります。結果を伝える前に、本人がどう振り返っているかを聞く時間を取ると、話を聞く準備が整います。
根拠があいまいなまま話している
「全体的にもう少し」「印象としては」のような言い方では、本人は何を直せばよいか分かりません。
根拠があいまいだと、本人は評価者の好き嫌いで決まったと受け取りがちです。どの場面の、どの行動を見て判断したかを話せるように準備しておきます。
人柄や姿勢を指摘している
「やる気が見えない」「責任感が足りない」のような指摘は、本人の内面を決めつける言い方です。
本人は否定されたと感じて身構え、話し合いになりません。指摘するのは、本人が変えられる行動に絞ります。
上司ばかりが話している
面談の時間の大半を上司が話していると、本人は一方的に通告された印象を持ちます。
本人の考えや事情を聞かないまま話を進めると、評価に影響した事実を見落とすこともあります。
フィードバック面談の前に準備すること
面談がうまく進むかどうかは、話し方の上手さよりも事前の準備で大きく変わります。次の4つを済ませてから面談に臨みます。
評価の根拠になる事実を書き出す
評価項目ごとに、判断の根拠になった場面や数字を書き出します。期中の1on1の記録や週報、目標の進み具合を見返すと、期末直前の出来事だけに偏らずに済みます。
高く評価した点と課題の両方について、具体的な場面を最低1つずつ用意しておくと話しやすくなります。
本人の自己評価を読んでおく
自己評価がある場合は、面談の前に読み、評価者の見方とずれている項目に印を付けておきます。
ずれている項目は、面談で最も時間をかけて話す部分です。本人が成果として挙げている点に、見落としていた事実がないかも確かめます。
伝えたいことを3つまでに絞る
伝えたいことが多すぎると、本人には何が大事なのかが伝わりません。
よかった点・直してほしい点・次の期に期待することの中から、特に伝えたいことを合わせて3つ程度に絞ります。細かい指摘は評価シートのコメントに任せ、面談では優先度の高い話に時間を使います。
時間と場所を確保する
面談は30分〜1時間程度を目安に、ほかの人に話が聞こえない場所で行います。オンラインでも構いません。
予定は数日前に伝え、自己評価を見返しておいてもらうと、当日の話がスムーズに進みます。
評価フィードバックを伝える順番
面談を次の順番で進めると、本人が評価の結果を受け止めやすくなります。
- 面談の目的を伝える:「今期の振り返りと、来期に向けて話したい」と最初に共有する
- 本人の振り返りを聞く:今期うまくいったこと、苦労したことを本人の言葉で話してもらう
- よかった点を具体的に伝える:本人の振り返りに重ねて、評価者が認めている点を伝える
- 評価の結果と根拠を伝える:基準に照らした判断と、その根拠になった事実を話す
- 課題を伝え、本人の考えを聞く:直してほしい行動を1〜2つに絞り、本人の受け止めを聞く
- 次の期の目標と支援を決める:何をするか、上司は何を手伝うかを一緒に決める
- 要点を確かめて終える:決めたことを本人に言葉にしてもらい、記録に残す
本人の振り返りを先に聞くのは、評価者と本人の認識のずれを、結果を伝える前に知るためです。本人が自分で課題に触れた場合は、それを起点に話すと指摘が受け入れられやすくなります。
「褒めて・指摘して・褒める」に頼りすぎない
課題の指摘を前後の褒め言葉で挟む伝え方は、サンドイッチ型と呼ばれます。指摘を受け止めてもらいやすくなる面はありますが、毎回使うと本人は「褒め言葉のあとに本題が来る」と身構えるようになります。
褒め言葉を前置きに使うより、よかった点も課題も、それぞれ具体的な事実で伝えるほうが信頼されます。
SBI型で伝える|場面・行動・影響
一つひとつの指摘は、SBI型で話すと具体的になります。SBI型は、米国のリーダーシップ研究機関CCL(Center for Creative Leadership)が広めたフィードバックの型として知られ、次の3つを順に伝えます。
- Situation(場面):いつ、どこで、どんな状況だったか
- Behavior(行動):本人が何をしたか、何をしなかったか
- Impact(影響):その行動が、お客様・チーム・成果にどう影響したか
評価者の印象や本人の内面ではなく、観察できた行動を話すのが要点です。よかった点にも課題にも同じ型が使えます。
SBI型の言い換え例
| よくある言い方 | SBI型の言い方 |
|---|---|
| 最近、報告が遅いよね | 先月、A社から納期変更の連絡があったとき(場面)、上長に共有するまで2日かかった(行動)。そのため代替案の提案が間に合わなかった(影響) |
| 会議でもっと積極的に | 週次の企画会議で(場面)、この3か月は発言が無かった(行動)。現場の意見が出ないまま案が決まり、あとで手直しが必要になった(影響) |
| 後輩の面倒見がいいね | 4月に新人が入ったとき(場面)、新人と毎日10分の振り返りを続けた(行動)。新人は1か月で一人で受付を回せるようになった(影響) |
影響を伝えたあとは、「どうすればよかったと思う?」と本人に聞くと、次の行動を本人の言葉で決められます。
評価フィードバック面談の会話例
ここでは、営業職の部下に、期待どおりの評価と1つの課題を伝える面談の例を紹介します。名前や数字は一例です。
上司:今日は今期の振り返りと、来期に向けて話したいと思っています。
まず、自分では今期をどう振り返っていますか?
部下:新規の目標は達成できましたが、既存のお客様へのフォローが手薄だった気がしています。
上司:そう感じていたんですね。新規開拓は目標の8件をきちんと達成しました。
特に、展示会のあと1週間以内に、名刺を交換した全員へ連絡していたことが
成果につながったと見ています。新規開拓の項目は「期待どおり」です。
部下:ありがとうございます。
上司:一方で、さっき自分でも挙げてくれた既存のお客様のフォローについてです。
6月のB社の契約更新では、こちらから連絡したのが更新月の直前で、
条件の相談に時間を取れないまま更新になりました。
既存顧客対応の項目は「あと一歩」と評価しています。どう受け止めていますか?
部下:新規に時間を取られて、既存のお客様への連絡を後回しにしていました。
上司:どうすれば両立できそうですか?
部下:毎月の初めに、3か月後に更新を迎えるお客様を確認して、連絡の予定を入れようと思います。
上司:いいですね。月1回の1on1で、更新予定の一覧を一緒に見るようにしましょう。
最後に、来期に取り組むことを一度まとめてもらえますか?上司は本人の振り返りを先に聞いたので、課題を一方的に突き付けずに、本人が挙げた課題を掘り下げる形で話を進められています。課題は「6月のB社の契約更新(場面)」「連絡が更新月の直前だった(行動)」「条件の相談に時間を取れなかった(影響)」と、SBI型で伝えています。
次の行動は本人が決め、上司が手伝うことも合わせて決めています。
低い評価を伝えるときのポイント
期待より低い評価を伝える面談は、評価者にとって特に気が重い場面です。次の点を押さえると、本人が次の期に向けて動きやすくなります。
結果をぼかさずに伝える
言いにくさから「まあ、悪くはないんだけど」と結果をぼかすと、本人は評価が低いことにも、その理由にも気づけません。
結果ははっきり伝え、そのうえで根拠と、どうなれば評価が上がるかを具体的に話します。面談で結果をぼかすと、あとで評価結果の書面を見た本人が「面談で聞いた話と違う」と不信感を持ちます。
課題を期末に初めて伝えない
期末の面談で初めて課題を知らされると、本人は「なぜもっと早く言ってくれなかったのか」と感じます。
課題に気づいた時点で、1on1などで早めに伝えておくのが基本です。期末の面談は、期中に話してきたことの確認の場にするのが理想です。1on1の進め方は1on1とは?で解説しています。
次の期の道筋を必ず示す
低い評価だけを伝えて終わると、本人の意欲は下がります。
次の期に何ができれば評価が上がるのか、上司はそのために何を手伝うのかを具体的に決めて終えます。目標の立て方は目標設定の書き方と例文を参考にできます。
部下に反発されたときの対応
評価の結果に本人が納得せず、反論や不満が出ることもあります。その場で言い負かそうとすると、話し合いの場になりません。
まず本人の見方を最後まで聞く
反発が出たら、説得を急がず、本人がどこに納得できないのかを最後まで聞きます。
「どの点がいちばん納得できないですか?」と具体的に聞くと、不満の中心が見えてきます。評価者が知らなかった事情や成果が出てくることもあります。
基準と事実に戻って話す
本人の話を聞いたら、評価の基準と、判断の根拠にした事実に戻って説明します。
「あなたはこうだ」と人を主語にせず、「この項目の基準はこうで、この場面をこう見た」と基準を主語にして話すと、感情的な対立になりにくくなります。
新しい事実が出たら持ち帰る
本人の話から、評価者が知らなかった成果や事情が分かった場合は、その場で結論を出さずに持ち帰ります。
二次評価者や人事と確かめたうえで、結果を変えるかどうかを後日伝えます。自分の話をきちんと検討してもらえたと分かれば、結果が変わらなくても本人は納得しやすくなります。
強い不満が続くときは上司以外も話を聞く
話し合っても納得が得られない場合は、二次評価者や人事、経営者など、直属の上司以外が話を聞く場を設けます。
直属の上司だけで解決しようとすると、関係がこじれることがあります。また、同じ不満が複数の社員から出るときは、伝え方ではなく評価基準そのものを見直す必要があるかもしれません。
面談の記録を残し、次の面談につなげる
面談で決めたことは、その日のうちに記録に残します。記録が無いと、次の期の途中で「何を約束したか」があいまいになります。
記録に残すのは、次の3つが基本です。
- 本人と合意した次の期の目標・行動
- 上司が約束した支援(同行・研修・定期的な確認など)
- 本人から出た意見や要望
JOB COMPASSの面談では、面談の相手にも見える共有メモと自分だけのメモを分けて記録でき、メモの横で過去の面談や評価・目標を参照しながら話せます。
まとめ
- 評価フィードバックは、評価の理由を伝え、次の期の行動を本人と決めるための対話です。
- 結果を先に告げず、本人の振り返りを聞いてから、よかった点・結果と根拠・課題・次の期待の順に伝えます。
- 個々の指摘は、場面・行動・影響のSBI型で話すと、人柄を否定せずに事実が伝わります。
- 低い評価は結果をぼかさず、どうなれば評価が上がるかの道筋を必ず示します。
- 反発されたら説得を急がず、本人の見方を聞いてから基準と事実に戻って話します。
フィードバックの上手さは、話術よりも準備と順番で決まります。次の評価面談では、まず「自分では今期をどう振り返っていますか?」と聞くところから始められます。
よくある質問
評価フィードバックの面談は、どのくらいの時間をかければよいですか?
一人あたり30分〜1時間程度が目安です。
本人の振り返りを聞き、次の期の目標まで決めるには、15分程度では足りないことが多くなります。伝えたいことを3つまでに絞っておくと、時間内に話を終えやすくなります。
評価の結果は、面談の最初に伝えるべきですか?
本人の振り返りを先に聞いてから伝えるのがおすすめです。
最初に結果だけを伝えると、本人はその結果に気を取られ、根拠や次の期待が耳に入りにくくなります。ただし、本人が結果を早く知りたがっている場合は、先に結果を伝えてから根拠を丁寧に話しても構いません。
オンラインでも評価フィードバックはできますか?
できます。カメラをオンにして表情が見える状態で話すと、対面に近い形で進められます。
オンラインでは相手の反応が読み取りにくいため、要所で「ここまでで疑問はありますか?」と確かめる回数を増やします。決めたことは画面共有でメモを見せながら確認すると、認識のずれを防げます。
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