バリュー評価の意味と、コンピテンシー評価・情意評価との違い、メリットとよくある失敗を解説。経営理念や行動指針を評価項目に落とし込む手順と、項目・レベル定義の例を紹介します。
この記事でわかること
- バリュー評価は、会社が大切にする価値観に沿った行動ができているかを見る評価
- バリューを「職場で観察できる行動」に分解し、レベルごとの状態を文章で定義する
- 評価だけで終わらせず、面談・振り返り・表彰でもバリューを話題にすると形骸化しにくい
目次
バリュー評価とは、会社が大切にする価値観(バリュー)や行動指針に沿った行動ができているかを評価する方法です。理念を掲げるだけで終わらせず、日々の行動と評価に結びつけるために使われます。
作るときの要点は、バリューを「職場で観察できる行動」に分解し、レベルごとの状態を文章で定義することです。
この記事では、バリュー評価の意味とほかの評価方法との違い、メリットとよくある失敗、行動指針を評価項目にする手順、項目とレベル定義の例を紹介します。
バリュー評価とは
バリュー評価は、自社の価値観に照らして「その人の行動が会社らしいか」を評価する方法です。売上や目標の達成度ではなく、仕事の進め方や周囲との関わり方を見ます。
たとえば「お客様第一」というバリューを掲げる会社なら、お客様の要望を聞き取って提案に生かしているかを評価します。同じ成果でも、どんな行動で出したかを見るのがバリュー評価の特徴です。
ミッション・ビジョン・バリューの関係
経営理念は、ミッション・ビジョン・バリューの3つに分けて整理されることがよくあります。
- ミッション:会社が社会の中で果たす役割や存在意義
- ビジョン:会社が将来目指す姿
- バリュー:ミッションやビジョンに向かうときに大切にする価値観や行動の基準
評価の対象にしやすいのは、3つの中で最も行動に近いバリューです。会社によっては「行動指針」「クレド」「大切にしていること」などの呼び名で定めています。
コンピテンシー評価・情意評価との違い
バリュー評価は、行動を見る点でコンピテンシー評価や情意評価と似ています。違いは、評価の基準をどこから持ってくるかです。
| 評価方法 | 何を見るか | 項目の出どころ |
|---|---|---|
| バリュー評価 | 自社の価値観に沿った行動 | 経営理念・行動指針 |
| コンピテンシー評価 | 成果を上げる人に共通する行動 | 社内で成果を上げている人の行動 |
| 情意評価 | 仕事への姿勢や取り組み方 | 多くの会社で使われてきた規律性・責任性・協調性・積極性などの項目 |
コンピテンシー評価は職種ごとに項目が変わり、情意評価はどの会社でも似た項目になりがちです。バリュー評価は、会社ごとに項目が大きく変わる点が特徴です。
実務では、情意評価の項目を自社のバリューに置き換えたり、コンピテンシーの考え方でバリューを行動に分解したりと、組み合わせて使うこともできます。詳しくはコンピテンシー評価とは?と情意評価とは?で解説しています。
バリュー評価のメリット
バリュー評価を取り入れると、成果の数字だけでは伝わらない「会社が社員に期待していること」を伝えられます。
理念が掛け声で終わらない
経営理念を額に入れて飾っているだけでは、社員は日々の仕事で何をすればよいか分かりません。
バリューを評価項目にすると、理念が「この場面ではこう動く」という行動に置き換わります。評価面談のたびに上司と部下がバリューについて話す機会も生まれ、理念が職場の共通言語になっていきます。
数字に表れにくい貢献を評価できる
後輩への声かけや、部署をまたいだ協力のように、成果の数字には表れにくい行動があります。
こうした行動がバリューに沿っていれば、評価の中で認められます。縁の下で職場を支えている人が、正当に評価されていると感じやすくなります。
判断や育成の基準がそろう
バリューに沿った行動が具体的に書かれていると、迷ったときに「うちの会社ならどうするか」を考える拠り所になります。
上司ごとに部下に求めることがばらばらになるのも防げます。採用面接や新人教育で伝える内容とも基準をそろえやすくなります。
バリュー評価のデメリットと、よくある失敗
バリュー評価は、作り方を誤ると評価者の印象で点数が決まる制度になります。導入前に、よくある失敗を押さえておきます。
バリューが抽象的なまま評価している
「誠実である」「挑戦する」のような言葉をそのまま評価項目にすると、何ができていれば高評価なのかが人によって変わります。
評価者は自分の解釈で採点するので、同じ行動でも上司によって点数が変わります。本人も、何を直せば評価が上がるのかが分かりません。
「感じのよい人」が高く評価される
基準があいまいだと、評価者は印象で判断しがちです。明るく元気な人、上司とよく話す人、考え方が上司に近い人の評価が高くなります。
社員がバリュー評価を「上司に気に入られれば点数が上がる制度」と受け取ると、会社の価値観はかえって伝わらなくなります。評価者の印象や思い込みで評価がゆがむことは、評価者エラーと呼ばれます。
全員が同じ点数になる
バリューに沿った行動は、目立って良い例も悪い例も見つけにくいものです。判断の材料が無いまま、評価者が全員に「普通」をつけて済ませてしまうことがあります。
差がつかない評価が続くと、評価する側もされる側も、バリュー評価を形だけのものと感じるようになります。
項目が多すぎて運用が続かない
バリューを10個も20個も並べると、評価者は1人を評価するだけで時間がかかり、一つひとつの項目を丁寧に見られなくなります。
社員も覚えきれず、日々の行動を振り返る基準として使われません。
行動指針を評価項目にする手順
バリュー評価は、次の5つの手順で作ると、評価がぶれにくくなります。
- バリューを3〜5個に絞る
- バリューごとに、職場で見える行動を書き出す
- 1つのバリューを1〜3個の行動項目にまとめる
- レベルごとの状態を文章で定義する
- 比重を決めて、1期試してから見直す
ステップ1:バリューを3〜5個に絞る
まず、評価の対象にするバリューを3〜5個に絞ります。すでに行動指針が10個以上ある場合は、似たものをまとめるか、特に大事にしたいものを選びます。
社員が何も見ずに言える数にしておくと、日々の行動を振り返るときにも使われやすくなります。
ステップ2:バリューごとに、職場で見える行動を書き出す
次に、それぞれのバリューについて「この会社で、このバリューを体現している人は何をしているか」を書き出します。
経営者や管理職だけで考えず、社員にも聞くのがおすすめです。「最近、この人はうちらしいと思った場面」を集めると、職場の言葉で書かれた具体的な行動が集まります。
ステップ3:1つのバリューを1〜3個の行動項目にまとめる
書き出した行動のうち、似たものをまとめて、1つのバリューにつき1〜3個の評価項目にします。
項目は「〜している」のように、第三者が見て確かめられる行動で書きます。「〜の意識が高い」「〜を大切にしている」のような心の中の状態は、評価者が観察できないので避けます。
ステップ4:レベルごとの状態を文章で定義する
項目ごとに、どの状態ならどのレベルかを文章で定義します。レベルの段階は、ほかの評価項目と同じ段階数にそろえると集計しやすくなります。
最も大事なのは、標準のレベルを「この等級の社員に期待する状態」として具体的に書くことです。標準がはっきりしていれば、それより上か下かを判断しやすくなります。
ステップ5:比重を決めて、1期試してから見直す
バリュー評価だけで全体の評価を決めるのではなく、成果やスキルの評価と組み合わせます。まずは控えめな比重から始め、運用しながら調整します。
1期終えたら、評価者と社員に「判断に迷った項目」「点数に差がつかなかった項目」を聞き、項目の文言やレベルの定義を直します。評価制度全体の組み立て方は人事評価制度の作り方を参考にできます。
バリュー評価の項目とレベル定義の例
ここでは、よくあるバリューを行動に分解した例を紹介します。文言は一例なので、自社の仕事の場面に置き換えて使います。
評価項目の例
| バリュー | 行動に分解した評価項目の例 |
|---|---|
| お客様第一 | お客様の困りごとを聞き取り、頼まれた内容に加えて、役に立つ提案をしている |
| チームで成果を出す | 自分の仕事の進み具合や気づきを、聞かれる前に周りへ共有している |
| 挑戦する | これまでにないやり方を提案し、小さく試して結果を周りに伝えている |
| 誠実である | ミスや遅れを隠さず、気づいた時点で上司や関係者に報告している |
| 学び続ける | 仕事に必要な知識を自分から学び、学んだことを職場に共有している |
どの項目も、上司がふだんの仕事の中で「見た」「聞いた」と言える行動で書いています。
レベル定義の例
「挑戦する」の項目「これまでにないやり方を提案し、小さく試して結果を周りに伝えている」を、5段階で定義した例です。
| レベル | 状態の例 |
|---|---|
| Lv1 | 指示されたやり方で仕事を進めており、改善の提案はまだ無い |
| Lv2 | 気づいた改善点を上司に伝えているが、試すところまでは進んでいない |
| Lv3 | 自分の担当業務で新しいやり方を試し、その結果を上司に報告している |
| Lv4 | 試した結果をチームに共有し、うまくいったやり方を職場に広めている |
| Lv5 | 部署をまたいだ改善を自ら企画し、周りを巻き込んで実行している |
Lv3を標準として「担当業務の中で、自分で試して報告する」状態を期待水準に置いています。うまくいかなかった挑戦でも、試して結果を共有していれば評価される定義にしておくと、失敗を恐れて提案が減ることを防げます。
等級によって期待の水準を変える
同じバリューでも、役割によって期待する行動の範囲は変わります。たとえば「チームで成果を出す」なら、次のように書き分けられます。
- 一般社員:自分の仕事の進み具合や困りごとを、聞かれる前にチームへ共有している
- リーダー:メンバーの困りごとに早く気づき、仕事の分担を見直して手を貸している
- 管理職:部署をまたいだ協力の場をつくり、組織全体で成果を出す仕組みを整えている
等級ごとに書き分ける余裕がなければ、まずは全社共通の項目で始め、標準のレベルを等級によって変える方法もあります。等級の考え方は等級制度とは?で解説しています。
バリュー評価を形骸化させない運用のコツ
バリュー評価は、項目を作って終わりではありません。期末の採点だけで使うと、社員は評価の時期にしかバリューを思い出さなくなります。
期中にバリューに沿った行動を記録する
期末に半年分の行動を思い出して評価すると、直近の出来事や目立った出来事に評価が引きずられます。
上司は、バリューに沿った行動を見かけたら、日付と場面を短くメモしておきます。本人にも自己評価で「バリューに沿った行動の具体例」を書いてもらうと、上司が見ていなかった行動も評価の材料になります。
面談や朝礼でバリューを話題にする
1on1や評価面談で「最近、お客様第一でうまくいった場面はありましたか?」のようにバリューを話題にすると、社員が日々の仕事とバリューを結びつけて考えるようになります。
朝礼や社内の表彰で、バリューに沿った行動をした人を紹介するのも一つの方法です。評価以外の場面でも使われてはじめて、バリューは職場に根づきます。
年に1回は項目を見直す
事業や組織が変われば、大切にしたい行動も変わります。年に1回は、項目の文言が今の仕事の場面に合っているかを見直します。
JOB COMPASSのマインドセット評価では、登録した経営理念・価値観から行動指針の項目とレベルの目安をAIが下書きし、人が確認・編集して評価項目に確定できます。登録後も項目やレベルの目安を編集できるので、年に1回の見直しにもそのまま使えます。
まとめ
- バリュー評価は、会社が大切にする価値観に沿った行動ができているかを見る評価方法です。
- コンピテンシー評価・情意評価と似ていますが、項目の出どころが自社の経営理念や行動指針である点が違います。
- バリューが抽象的なままだと、評価者の印象で点数が決まり、全員が同じ点数になりがちです。
- バリューを3〜5個に絞り、職場で見える行動に分解して、レベルごとの状態を文章で定義します。
- 成果やスキルの評価と組み合わせ、面談や表彰でもバリューを話題にすると形骸化しにくくなります。
まずは自社のバリューを1つ選び、「この会社で、このバリューを体現している人は何をしているか」を社員に聞くところから始められます。
よくある質問
社員が少ない会社でもバリュー評価を導入できますか?
導入できます。社員が少ない会社ほど、経営者の考えが社員に直接伝わりやすく、バリューを行動に分解する話し合いもしやすくなります。
最初からすべてのバリューを項目にする必要はありません。特に大事にしたいバリューを2〜3個選び、1つにつき1項目から始めると、評価の手間も抑えられます。
バリュー評価の結果を昇給・賞与に反映してもよいですか?
反映できますが、バリュー評価だけで処遇を決めるのは避け、成果やスキルの評価と組み合わせるのが一般的です。
項目やレベルの定義が固まっていないうちに処遇へ強く反映すると、評価の甘辛の差がそのまま不公平につながります。まずは育成や面談の材料として1期試し、評価がそろってきてから比重を上げると安心です。
バリューや行動指針がまだ決まっていない場合はどうしますか?
経営者がこれまで大切にしてきた判断や、社員に繰り返し伝えてきた言葉を書き出すところから始めます。
社員に「うちの会社らしいと思う行動」を聞き、経営者の考えと重なるものをバリューとして言葉にする方法もあります。決まるまでの間は、規律性・責任性・協調性・積極性のような情意評価の一般的な項目で始め、あとから自社のバリューに置き換えても構いません。
FEATURES