COLUMN 人事評価の基礎

能力評価とは?評価項目の例と、発揮能力を見るポイント

読了 約10分

能力評価の意味と、保有能力・発揮能力の違い、業績評価・情意評価・コンピテンシー評価との使い分けを解説。等級ごとの評価項目とレベル定義の例、評価が年功化しないための工夫も紹介します。

この記事でわかること

  • 能力評価は仕事をするための知識・スキル・判断力などを評価するもの
  • 「持っているか」ではなく「仕事で使えているか」(発揮能力)を見ると公平になりやすい
  • 項目は等級ごとに期待する水準を変え、できることを行動の形で書く
目次
  1. 01能力評価とは
  2. 02保有能力と発揮能力の違い
  3. 03能力評価のメリットとデメリット
  4. 04能力評価の項目の作り方
  5. 05能力評価の評価項目とレベル定義の例
  6. 06まとめ
  7. 07よくある質問

能力評価とは、社員が仕事をするために必要な知識・スキル・判断力などを、どの程度身につけているかを評価するものです。

評価のときに大切なのは、能力を「持っているか」ではなく「仕事の場で使えているか」で見ることです。仕事の場で表れた力を「発揮能力」と呼び、これを基準にすると評価の根拠を説明しやすくなります。

この記事では能力評価の意味とほかの評価との違い、保有能力と発揮能力の考え方、メリット・デメリット、等級別の評価項目とレベル定義の例を紹介します。

能力評価とは

能力評価とは、仕事を進めるための力が期待される水準に達しているかを評価するものです。対象は業務知識・専門スキル・判断力・企画力・指導力などです。

日本の人事評価(人事考課)では、「成績(業績)」「能力」「情意」の3つを評価の柱にする考え方が広く使われてきました。能力評価はそのうちの1つで、成果を生み出すもとになる力を見る評価です。

能力評価で見る主な能力

能力評価の項目は大きく次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 知識・技能:業務知識、専門技術、資格、ツールの操作など、仕事の基礎になる力
  • 思考・判断の力:問題を見つける力、判断力、企画力、改善の力
  • 対人の力:説明・交渉の力、調整力、後輩への指導力

若手には知識・技能を、管理職には判断や指導の力を、というように、等級によって重視する能力を変えるのが一般的です。

業績評価・情意評価・コンピテンシー評価との違い

能力評価はほかの評価の型と組み合わせて使うのが一般的です。それぞれが何を見るかを比べると、違いがはっきりします。

評価の型何を見るか問いの形
業績評価(成果評価)期間中に出した成果・目標の達成度何を達成したか
能力評価仕事に必要な知識・スキル・判断力など何ができるか
情意評価仕事に向かう姿勢・態度どう取り組んだか
コンピテンシー評価成果を出す人に共通する行動成果につながる行動をしたか

業績評価は「結果」、能力評価は「結果を生む力」を見ます。そのため、成果が出なかった期でも、力がついていれば能力評価では認められます。業績評価の考え方は業績評価とは?で詳しく解説しています。

保有能力と発揮能力の違い

能力評価を考えるときに押さえておきたいのが、保有能力と発揮能力の違いです。

保有能力は「持っている力」

保有能力とは、本人が身につけている知識やスキルそのものです。資格を持っている、研修を受けた、経験年数が長い、といったことが根拠になります。

確かめやすい反面、持っている力が仕事に生かされているかまでは分かりません。たとえば同じ資格を持つ人は、実務でその知識を使っていてもいなくても、同じ評価になります。

発揮能力は「仕事で使えている力」

発揮能力とは期間中の仕事の中で実際に表れた力です。「顧客からの問い合わせに、上長に確認せず正しく回答できている」のように、仕事の場面で確かめます。

評価者は期間中に見た事実をもとに判断でき、本人にも根拠を伝えやすくなります。近年の能力評価では、発揮能力を重視する考え方が広がっています。

コンピテンシー評価との使い分け

発揮能力を見る能力評価と、コンピテンシー評価はよく似ています。

大きな違いは基準の作り方にあります。能力評価は「この等級ならこれができてほしい」という期待から項目を作ります。コンピテンシー評価は「成果を出している人はこう動いている」という観察から項目を作ります。

まずは能力評価で等級ごとの期待を言葉にし、成果とのつながりをより強めたい段階でコンピテンシーの考え方を取り入れる、という順番でも構いません。コンピテンシー評価の考え方はコンピテンシー評価とは?で詳しく解説しています。

能力評価のメリットとデメリット

能力評価は育成に結びつけやすい一方で、運用を誤ると年功的な評価になりやすい面もあります。

メリット:育成の目標が分かりやすい

能力評価の項目はそのまま「次に身につけてほしい力」の一覧になります。

本人は何を伸ばせば評価が上がるかが分かり、上長も面談で次の目標を一緒に決めやすくなります。

メリット:成果が出にくい時期も評価できる

新入社員や異動したばかりの社員は、すぐに成果を出しにくいものです。

能力評価があれば、仕事を覚えて力がついてきたことを評価に表せます。成果が景気や担当顧客に左右されやすい職種でも、本人の成長を認める手段になります。

デメリット:年功的な評価になりやすい

能力は「一度身につけたら失われない」と考えられやすく、評価が年々上がる一方になりがちです。

経験年数が長いだけで高く評価され、若手の頑張りが見えにくくなると、不満の原因になります。保有能力だけで評価すると、この傾向はさらに強まります。

デメリット:基準があいまいになりやすい

「判断力がある」「企画力がある」のような言葉だけの項目では、評価者によって思い浮かべる姿が違います。

基準がそろわないまま評価すると、評価者の印象で点数が決まり、本人も納得しにくくなります。こうした評価のゆがみは評価者エラーとは?で詳しく紹介しています。

能力評価の項目の作り方

能力評価を公平にするには、項目の選び方と書き方、等級ごとの水準、評価のときの確かめ方を決めておきます。

職種ごとに必要な能力を洗い出す

まず、職種ごとに仕事で使う能力を洗い出します。

その職種で仕事ができている人を思い浮かべ、「この人は何ができるから仕事が回っているのか」を書き出すと、項目の候補が集まります。現場のリーダーにも一緒に考えてもらうと、実務に合った項目になります。

項目は「できること」を行動で書く

能力評価の項目は能力の名前だけで終わらせず、仕事の場面でできることの形で書きます。

  • 悪い例:判断力がある
  • よい例:よくある問い合わせやトラブルは、マニュアルと過去の事例をもとに自分で判断して対応している

行動で書かれていれば、評価者は期間中の仕事と照らし合わせて判断できます。本人も、何ができるようになればよいかが分かります。

等級ごとに期待する水準を変える

同じ能力でも、新入社員と管理職では期待する水準が違います。

項目は共通にして、等級ごとに「期待どおり」の状態を書き分けると、全体をそろえやすくなります。等級ごとの期待の書き方は等級制度とは?で紹介しています。

期間中の仕事で確かめる

発揮能力を見るには、期間中の仕事ぶりを根拠にします。

上長は、能力が表れた場面を日付と一緒に短くメモしておきます。資格の取得や研修の受講は、そこで身につけた力を仕事で使えているかを確かめるきっかけとして扱うと、保有能力だけの評価になりません。

前の期の評価をそのまま持ち越さない

年功化を防ぐには、評価のたびに「今期の仕事で発揮できていたか」を確かめることが大切です。

昇格して上の等級になったのに、前の等級と同じ水準の仕事にとどまっていれば、新しい等級の期待を下回ると評価します。逆に、等級より上の力を発揮していれば、昇格を考えるきっかけになります。

能力評価の評価項目とレベル定義の例

ここでは職種を問わず使いやすい4つの能力について、評価項目とレベル定義の例を紹介します。5段階のうち、3(期待どおり)・4(期待を上回る)・2(期待を下回る)の3段階を、一般社員を想定して載せています。

業務知識・技能

評価項目:担当業務に必要な知識と手順を身につけ、決められた品質で仕事を進めている

レベル状態の例
4担当業務の手順を人に説明でき、マニュアルの不足や古くなった点を直している
3担当業務を、上長の確認なしで決められた品質と期限で進めている
2手順の確認が多く、上長や先輩の手直しが必要になることがある

判断力

評価項目:起きている状況をつかみ、自分の権限の範囲で適切に判断している

レベル状態の例
4前例のない場面でも、判断の根拠と選択肢を整理して上長に示し、対応を決めている
3よくある問い合わせやトラブルは、マニュアルと過去の事例をもとに自分で判断して対応している
2自分で判断できる場面でも上長に任せきりにする、または必要な確認をせずに進めてやり直しになることがある

改善・企画力

評価項目:仕事の問題点に気づき、改善の方法を考えて実行している

レベル状態の例
4改善を実行して効果を確かめ、チームの手順として定着させている
3担当業務の手間やミスの原因に気づき、改善案を出して試している
2問題に気づいても、改善案を出すところまで至らないことが多い

説明・調整力

評価項目:相手に合わせて分かりやすく伝え、関係者と調整して仕事を進めている

レベル状態の例
4利害の異なる関係者の意見をまとめ、合意を取りつけて仕事を前に進めている
3要点を整理して報告・説明し、関係者と日程や役割を調整している
2説明が伝わらず、確認のやり取りが増えることがある

等級ごとに水準を書き分ける例

同じ「判断力」でも、等級によって「期待どおり」の状態は次のように変わります。

等級の目安判断力の「期待どおり」の状態
一般社員(初級)手順が決まっている仕事で、迷ったときに早めに相談している
一般社員(中堅)よくある問い合わせやトラブルを、自分で判断して対応している
リーダー前例のない場面でも選択肢を整理し、チームの対応を決めている
管理職部署の方針に関わることを根拠を示して判断し、結果に責任を持っている

表の文言は一例です。自社の仕事の場面に置き換え、「うちの職場ならこういう状態」と具体的にすると、評価者も本人も判断しやすくなります。

専門スキルの多い職種では、評価項目とは別にスキルの一覧を作り、スキルごとのレベルを記録していく方法もあります。JOB COMPASSのスキルマップでは、誰がどのスキルをどのレベルでできるかをLv1〜5のヒートマップで確かめられ、能力評価の根拠や育成の話し合いに使えます。スキルの一覧の作り方はスキルマップとは?で解説しています。

まとめ

  • 能力評価は仕事をするための知識・スキル・判断力などを評価するものです。
  • 「持っている力」(保有能力)ではなく「仕事で使えている力」(発揮能力)を中心に見ると、根拠を説明しやすくなります。
  • 育成の目標が分かりやすく、成果が出にくい時期の成長も評価できるのが強みです。
  • 一方で、年功的な評価や、言葉だけのあいまいな基準になりやすい点に注意が必要です。
  • 項目は「できること」を行動で書き、等級ごとに期待する水準を書き分けます。

まずは今ある能力評価の項目のうち1つを選び、「期待どおり」の状態を仕事の場面で1文書き足すところから始められます。

よくある質問

能力評価と情意評価はどう分ければよいですか?

能力評価は「何ができるか」を、情意評価は「どう取り組んだか」を見るものと考えると、分けやすくなります。たとえば、改善案を考えて形にする力は能力評価、改善に自分から手を挙げる姿勢は情意評価です。

同じ行動を両方で評価すると二重評価になるため、項目を作るときにどちらで見るかを決めておきます。情意評価の項目例は情意評価とは?で紹介しています。

資格を持っていれば、能力評価を高くしてよいですか?

資格は能力の目安になりますが、それだけで高く評価するのはおすすめしません。資格で分かるのは保有能力で、仕事で使えているかは別に確かめる必要があるためです。

資格は資格手当や昇格の要件として別に扱い、能力評価では資格の知識を仕事に生かせているかを見る、という分け方もあります。

能力評価の結果は、昇給・賞与のどちらに反映するのがよいですか?

能力評価は昇給や昇格に、業績評価は賞与に反映させる考え方がよく知られています。この考え方では長く続く力である能力をその後も続く処遇(昇給・昇格)に、その期の成果である業績をその期かぎりの処遇(賞与)に結びつけます。

ただし、どう結びつけるかは会社の方針によって異なります。まずは評価の目的を決め、社員に説明できる形にしておくことが大切です。

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