KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)の意味と違いを比較表で整理。KGIから個人目標までつなぐKPIツリーの作り方を、営業・製造・総務経理・サポートの部署別の例と注意点つきで解説します。
この記事でわかること
- KGIは最終的なゴールの達成を測る指標、KPIはゴールまでの道のりの進み具合を測る中間の指標
- KGIを分解し、成功のカギ(KSF)を挟んでKPIを選ぶと、個人が今日動ける目標まで落とし込める
- 個人目標には本人が動かせる指標を選び、数字の達成だけで評価を決めない
目次
KGIは「最終的にどこへたどり着きたいか」を測る指標で、KPIは「そのゴールに向けて順調に進んでいるか」を測る中間の指標です。KGIをゴールとすれば、KPIはそこへ至る途中の目印にあたります。
会社や部署のKGIを分解してKPIを選び、さらに一人ひとりの目標へつなげると、「自分の仕事が会社のゴールにどう効いているか」が見えるようになります。
この記事ではKGIとKPIの意味と違い、KGIから個人目標へ落とし込む手順、営業・製造・総務経理・サポートの部署別の例、個人目標にするときの注意点を紹介します。
KGIとKPIとは
KGIとKPIはどちらも目標の達成に向けて「何を数字で追うか」を決めるための言葉です。追う対象がゴールそのものか、途中の進み具合かで分かれます。
KGI(重要目標達成指標)
KGIは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。会社や部署が一定の期間で最終的に達成したいゴールを、数字で表したものです。
- 今期の売上を前期より10%伸ばす
- 年間の新規顧客を50社にする
- 工程内の不良率を1.5%以下にする
KGIは期末に「達成したかどうか」を判断するための指標です。期中にKGIだけを見ていても、何をすれば近づけるのかは分かりにくいままです。
KPI(重要業績評価指標)
KPIは「Key Performance Indicator」の略で、「重要業績評価指標」と訳されます。KGIを達成するまでの過程で、順調に進んでいるかを測る中間の指標です。
- 月の新規商談数
- 提案から成約に至った割合
- 作業標準書を見直した工程の数
KPIは週や月の単位で追い、遅れに早く気づいて手を打つために使います。名前に「評価」と入っていますが、人を評価するための点数ではなく仕事の進み具合を確かめるための目印と考えると使い方を誤りにくくなります。
KSF(重要成功要因)
KGIとKPIをつなぐ考え方に、KSF(Key Success Factor、重要成功要因)があります。KGIを達成するために「ここがうまくいけば達成できる」という成功のカギのことです。
たとえば売上を伸ばすKGIに対して、「新規の商談を増やすこと」がKSFなら、「月の新規商談数」がKPIになります。KSFを先に考えると、数ある数字の中からKPIを選びやすくなります。
KGIとKPIの違い
KGIとKPIの違いは測る対象と確かめる頻度にあります。表にまとめます。
| 比べる点 | KGI | KPI |
|---|---|---|
| 測るもの | 最終的なゴールの達成 | ゴールまでの過程の進み具合 |
| 数の目安 | 部署ごとに1つ〜数個 | 1つのKGIに2〜3個程度 |
| 主に確かめる時期 | 期末(半期末・年度末) | 毎週・毎月 |
| 主な使い方 | 達成したかどうかの判断 | 遅れに気づき、やり方を変える |
| 例 | 今期の新規顧客からの売上 | 月の新規商談数、成約率 |
KGIは「結果」を、KPIは結果につながる「過程」を測ると整理できます。結果が出てからでは打つ手が限られるため、先に動く数字をKPIとして追うのが基本です。
結果の指標と先に動く指標
KPIには結果に近い指標と、行動に近い指標があります。成約率や受注額は結果に近く、商談数や提案件数は行動に近い指標です。
行動に近い指標ほど、本人の努力で動かしやすく、早く変化が見えます。結果に近い指標だけをKPIにすると、期の後半まで何をすればよいか分からない状態が続きます。
MBO・OKRとの関係
KGIとKPIは指標の考え方で、それ自体は評価制度ではありません。目標管理制度(MBO)で目標を立てるとき、OKRで主要な結果(KR)を選ぶときに、「何で測るか」を決める道具として使います。
MBOとの関係はMBO(目標管理制度)とは?、OKRとの違いはOKRとは?で解説しています。
KPIを設定するメリットと注意点
KPIはゴールまでの道のりを区切って見えるようにする道具です。うまく使えば日々の仕事の手ごたえにつながりますが、数字の選び方を誤ると、数字を追うこと自体が目的になってしまいます。
メリット
- 期末を待たずに月ごとの数字で進み具合を確かめられ、途中で遅れに気づける
- 「売上を伸ばす」が「月に何件の商談をつくる」に変わり、やることがはっきりして今日の行動を決めやすくなる
- 自分の仕事がKGIのどこに効いているかを説明でき、会社のゴールとのつながりが見える
- うまくいった月とそうでない月の違いを話し合え、振り返りの材料になる
注意点
KPIを決めると、選んだ数字に注目が集まります。その分、後輩を手伝う、困りごとを先回りして片づけるといった、数字に表れない働きが見えにくくなります。
「指標が目標になると、よい指標ではなくなる」という考え方は、グッドハートの法則として知られています。商談数だけを追えば、成約の見込みが薄い商談でも数を増やそうとする、といったずれが起こりえます。
数えやすい数字が大切な仕事を表しているとは限りません。KPIは仕事の一部を映す目印と割り切り、数字の外にある働きは面談や振り返りで拾います。
KGIから個人目標へ落とし込む手順
KGIを個人の目標までつなげるには、KGIを分解し、KPIを選び、一人ひとりが動ける形に書き直します。この分解の図は木の枝のように広がることから「KPIツリー」と呼ばれます。
1. KGIを決める
まず、会社や部署が今期たどり着きたいゴールを1つ決め、数字と期限で書きます。「売上を伸ばす」ではなく「今期(4〜9月)の新規顧客からの売上を3,000万円にする」のように、期末に達成を判断できる形にします。
2. KGIを要素に分解する
次に、KGIの数字がどんな要素の掛け算や足し算でできているかを書き出します。新規顧客からの売上なら、次のように分けられます。
- 新規顧客からの売上 = 成約件数 × 1件あたりの金額
- 成約件数 = 商談数 × 成約率
分解すると、どの要素を動かせばKGIに近づくのかが見えてきます。
3. 成功のカギ(KSF)を選ぶ
分解した要素のうち、今期特に力を入れるところを選びます。すべてを同時に伸ばそうとすると、どれも中途半端になりがちです。
たとえば「成約率は前期から安定しているが、商談が足りない」のなら、商談数を増やすことがKSFになります。前期の実績や現場の声をもとに、伸ばす余地がある要素を選びます。
4. KPIと目標値を決める
選んだKSFを追える数字にしたものがKPIです。目標値はKGIから逆算します。
1件あたりの金額が平均50万円なら、3,000万円には60件の成約が必要です。成約率が25%なら、半期で240件、月に40件の商談が要ります。営業担当が4人なら、1人あたり月10件が目安になります。
逆算した数字が現実離れしているときは、KGIの高さか、KSFの選び方を見直します。最初に決めた数字のまま無理を重ねるより、この段階で直しておくほうが、期の途中で行き詰まりにくくなります。
5. 個人の目標と行動に書き直す
最後に、KPIを一人ひとりの目標に書き直します。数字をそのまま割り振るだけでなくその数字を動かすために本人が何をするかまで書きます。
- 担当エリアで月10件の新規商談をつくる
- そのために、休眠顧客のリストを月初に見直し、20社に連絡する
- 商談につながった連絡のしかたを、月末にチームで共有する
行動まで書くと、数字が届かなかった月にも「何を変えればよいか」を話し合えます。目標の文章の整え方はSMARTの法則とは?、職種ごとの書き方は目標設定の書き方と例文が参考になります。
部署別のKGI・KPIと個人目標の例
部署によって、追いやすい数字は異なります。ここでは4つの部署で、KGIからKPI、個人目標までをつなげた例を紹介します。数字はあくまで例です。
営業部
| 段階 | 例 |
|---|---|
| KGI | 今期の新規顧客からの売上を3,000万円にする |
| KPI | 部全体で月40件の新規商談、提案から成約に至る割合25% |
| 個人目標 | 担当エリアで月10件の新規商談をつくる。提案書のひな形を見直し、成約につながった工夫を月1回チームで共有する |
成約率は本人の力だけで動かしにくいため、個人目標では商談数と、成約率を上げるための工夫を組み合わせています。
製造部
| 段階 | 例 |
|---|---|
| KGI | 工程内の不良率を今期末までに2.0%から1.5%にする |
| KPI | 作業標準書を見直した工程の数、検査工程を担当できる人数 |
| 個人目標 | 担当する2工程の作業標準書を9月までに見直す。今期中に、検査工程の作業をひとりで任せられる水準まで身につける |
不良率は、多くの場合、班やラインの単位で出る数字です。個人目標には不良率を下げるために本人が取り組める行動と技能を置いています。
総務・経理部
| 段階 | 例 |
|---|---|
| KGI | 月次決算を翌月5営業日以内に締める |
| KPI | 経費精算の差し戻し件数、締め日から2営業日以内に処理を終えた請求書の割合 |
| 個人目標 | 差し戻しの多い申請項目をまとめた手引きを7月までに作り、各部署に案内する |
管理部門は売上のような数字を持ちにくい一方で、期限と正確さを数字にできます。差し戻し件数のように、ほかの部署の協力で動く数字は、個人目標では手引きづくりのような行動に置き換えています。
カスタマーサポート部
| 段階 | 例 |
|---|---|
| KGI | 契約の継続率を前期より高める |
| KPI | 問い合わせへの初回の回答までの時間、1回のやりとりで解決した割合 |
| 個人目標 | よく届く問い合わせ10件の回答の型を8月までに作り、チームで使えるようにする |
回答までの時間だけを追うと、急いで返した回答で解決せず、かえってやりとりが増えることがあります。解決した割合と組み合わせ、速さと中身の両方を見られるようにしています。
個人目標にするときの注意点
KPIを個人の目標にすると、本人の毎日の行動に結びつきます。その一方で、選び方によっては本人の負担や不公平感につながります。
本人が動かせる指標を選ぶ
個人の目標には本人の行動で動かせる指標を選びます。市場の状況や、ほかの部署の都合で大きく変わる数字を個人に背負わせると、努力と結果が結びつかず、目標が意欲を下げる原因になります。
部署全体でしか動かせない数字は、部署の目標として共有し、個人目標には「その数字のために自分がすること」を書きます。
数を絞る
KPIを増やすほど、一つひとつへの注意が薄れます。個人が追う数字は2〜3個程度に絞り、それ以外は部署で見る数字として分けておきます。
数字の達成だけで評価を決めない
KPIの達成度は評価の材料の一つですが、それだけで評価を決めるのはおすすめしません。担当する顧客や工程によって、数字の出やすさは違うからです。
数字が届かなかったときは、どんな行動をとり、何を工夫したかを見ます。数字が届いた場合も、無理なやり方で達成していないかを確かめます。成果と過程の両方を見る考え方は業績評価とは?で解説しています。
期中に見直す
期初に決めたKPIが、期の途中で合わなくなることもあります。月1回ほど上長と本人で数字を見ながら話し、効いていないKPIは期の途中でも差し替えます。
数字が伸びた月も、伸びなかった月も、その理由を言葉にしておくと、次の期の目標づくりに使えます。JOB COMPASSの育成目標では、本人と上長が目標の進捗と状態を更新でき、登録した目標は面談の画面にも表示されるため、数字を見ながら話す材料になります。
まとめ
- KGIは最終的なゴールの達成を測る指標、KPIはゴールまでの過程の進み具合を測る中間の指標です。
- KGIを要素に分解し、成功のカギ(KSF)を選んでからKPIを決めると、追う数字を絞り込めます。
- KPIの目標値はKGIから逆算し、現実離れしていればKGIやKSFを見直します。
- 個人目標には本人が動かせる指標を選び、その数字を動かすための行動まで書きます。
- KPIは仕事の一部を映す目印です。数字の達成だけで評価を決めず、数字の外にある働きは面談で拾います。
まずは自分の部署のKGIを1つ書き出し、その数字がどんな要素の掛け算でできているかを分解するところから始められます。
よくある質問
KPIとKSFはどちらを先に決めればよいですか?
KSFを先に考えるのがおすすめです。KGIを達成するための成功のカギ(KSF)を決めると、それを数字で表したものがKPIになります。
KPIから先に決めると、すでに集計している数字や測りやすい数字を選びがちです。測りやすさより、KGIへの効き方で選ぶと、追う意味のあるKPIになります。
数字で測りにくい部署にもKPIは必要ですか?
無理に数字をつくる必要はありません。管理部門や企画の仕事でも、期限・正確さ・作った成果物の数など、測れる数字が見つかることは多くあります。
それでも数字にしにくい仕事は、「どんな状態になっていれば達成か」を文章で決めておけば十分です。数字にしにくい目標の書き方は目標設定の書き方と例文で紹介しています。
KPIが未達だった人は評価を下げるべきですか?
数字だけで下げるのはおすすめしません。担当の顧客や工程、期中の状況の変化によって、数字の出やすさは変わるからです。
どんな行動をとり、遅れに気づいたときに何を工夫したかを見て評価します。そのうえで、次の期にKPIや取り組み方をどう変えるかを面談で話し合うと、評価が次の行動につながります。
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